GA-Lワイド
縦置きシャシー(FRシャシー)に、前後にマルチリンクのサスペンションを配置する量産モデルでは世界最高水準のプラットフォームで、レクサスLSとLCに使われている。北米市場で不動の高級車王者に君臨するメルセデスSクラスをベンチマークして同じ設計となっていると思われがちだが、前後輪マルチリンクはバブル期の日本メーカー(トヨタ、日産、MAZDA)が先に採用している。マルチリンクは多くのスペースが取られ、かなりの重量増になることから、サーキット向けモデル(ポルシェ911など)では後輪のみに採用されるケースが多い。
日産もMAZDAもこの設計からは撤退しており、トヨタだけが世界の頂点へ駆け上がったバブル期の日本の自動車作りの伝統を残している。大衆モデル向けのストラットサスペンションで見られる、急加速(オーバー・スクワット)、急減速(オーバー・ノーズダイブ)の操作時に、路面からの入力でステアリングもアクセルも手応えがなくなって空転するような悪いフィールは、新車価格1000万円超えのLSやLCにはふさわしくない。緊急時でも冷静かつ安全に停止できる。
トヨタ車全般でハンドリングがマイルドなのが特徴だが、この最高級シャシーはトヨタの味付けと相性が良い。ライバル車のポルシェ・パナメーラやBMW7シリーズを好む人には、おとなしいユニットと安定感に振ったシャシーは退屈だと批判されるようだが、高級車ユーザーのニーズは様々で、V8自然吸気&2シーターのレクサスLCの前に、BMW8シリーズは何らインパクトを残せず廃止となった。しかしレクサスLCも生産終了が近づいているようで、LCコンバーチブルは受注が殺到して2025年11月現在、納期がかなり長期化している。
レクサスLSは100万円くらいの中古車が出回っていて、高級車ユーザーとは思えない身なり&風貌な人も多い。逆に「型落ち」のLSに高級ブランド服で乗っているのも違和感しかない。トヨタの「型落ち」はインテリアが異常に古臭く見えてしまうのも不人気の理由かもしれない。しかし高級ブランドでもSUVが販売の中心となる中で、レクサスLSに好んで乗る人は、トヨタが目指した理想の高級車にしっかりと価値を見出して、他の大衆車やSUVでは味わえないカーライフを満喫しているエンスーの可能性は高い。