GA-K(後輪ダブルウィッシュボーン)
前輪ストラット、後輪ダブルウィッシュボーン(DWB)という設計は世界的には珍しく、トヨタ(横置き)とスバル(縦置き)が採用している。後輪DWBのトヨタ車は、GA-KとGA-Cがあるが、上級シャシーとなるGA-Kを使うのが、レクサスNX、RZ、LM、ハリアー、RAV4、アルファード、ヴェルファイアとなる。トヨタでは4番目のシャシーだが、採用車種は上級車として人気のモデルばかりだ。もしかしたらこれらも、レクサスRX(現行2022年式)やクラウン3車種と比べて開発世代が古いだけで、次期FMCの際にマルチリンクへ変わるかもしれない。
現状では同じGA-Kを使いつつも、後輪サスがRXとNX、クラウンとハリアー、RAV4を分ける違いとなっている。上級モデル(RX、クラウン)で新設計が採用され、それに次ぐモデル(NX、RAV4)にあとから導入されるのは、オールドメーカーにおいてよく見られる手法だ。さらにトヨタは全長4.5〜5.0m級サイズの中で複数のモデルを展開していて、部品の共有という点でメリットがある。一方でZR-Vとヴェゼルに、エクストレイルとキックスに、CX-5とCX-30の間には、大きな設計上の隔たりがあり、簡単に技術を共有できない。
後輪のマルチリンク化で走行安定性は高まるのだが、横置き(FFベース)の場合は後輪付近が重量増になるため、フロント荷重が弱まり、駆動上のロスが発生して、結果的に出力ダウンにつながる。現行のハリアー、RAV4が使う2LガソリンNAのダイナミックフォースエンジン(170ps)と組み合わせるなら、比較的軽量な後輪DWBの方が理にかなっている。CX-5は初代デビュー時から2Lと2.5Lが用意されているが、後輪マルチリンクでは2L(156ps)では重苦しい走りになるため、2.5L版が日本市場でも常に販売されてきた、さらに後継モデルでは2.5Lに一本化される。
現行レクサスNXは、デビュー時(2021年)に2.5LのNAが存在し、他のユニットもさらにハイパワーなものが用意されていたため、マルチリンクで登場すれば、より洗練されたグランドツーリングSUVになっていた。日本向けである2LのハリアーやRAV4が、軽量化目的の後輪DWBとストップ&ゴーに強いCVTを採用したのは合理的判断であるが、それと同じシャシーを使ってトルコンAT&200ps級エンジンを仕立てたNXには疑問が残る。次期レクサスNXではマルチリンク化でより完成度が上がると思うが・・・。