日本のユーザーを欺く
カーメディアは「EVシフト」を2035年に決定した欧州委員会(EC)が、悪者であるかのように書いて日本のユーザーを誘導する。これらの報道を「プロパガンダ」だと批判すると「言論弾圧」になってしまうので、ここは読者の側がリテラシーを高めるべきではあると思う。「公共の充電設備が圧倒的に不足している」「1充電での航続距離が不安」「災害時に使えなくなる」といった意見は、発信する側も納得する側も、BEVの使い道について「自分で考えない人(=バカ)」だと認めるに近い。ちょっと考えればわかると思うが・・・。
今回のプリウスのFMCでは、「社長はタクシー専用車にするつもりだった」という逸話がトヨタから発信された。欧州でタクシー向け乗用車として期待以上の成功を収めてきたプリウスを、都市部で主に使われるタクシー、ウーバー(副業的タクシー)、カーシェアなどの成長市場に集中導入するというトヨタの次世代ビジネスモデルが明確に存在していることを、「オブラート」に包んで開陳している。日本のユーザーには、このまま伝えるとデメリットも大きいから言わないようだけど・・・。
リスク管理
ここからはトヨタ内部を想像したフィクションなのでご容赦いただきたい。「プリウスはタクシー専用」という社長の判断に対して、「社長待ってください!!欧州委員会はTHSを締め出そうとしています。商用車に全振りするにはリスクが大き過ぎます!!」という現実的な意見が当然のように出てきた。ウクライナ危機など予想もされていなかった4年くらい前なので、まともな意見である。
すでにBEVの日産リーフが欧州のタクシー市場で躍進しているので、欧州の「THS締め出し」が正式に決定したら、目も当てられない大敗北が予想される。BEVのためのインフラも急速に整備されているから、THSプリウスの優位性は脅かされる公算が高い。さらに「専用車」として露骨に欧州タクシー市場をジャックしに行けば、欧州の地元メーカーの危機感を不必要に煽ることになり、欧州委員会がさらに急進的になる可能性もある。2009年に北米で巻き起こった「トヨタ・バッシンング」みたいなものが、近年はやたらと保守的な欧州で巻き起こっても不思議ではない。