低速トルク問題
15年前のランエボも英国仕様は400ps化されていた。入れ替わりで2010年代にメルセデス版ランエボとして「A45AMG」が登場(三菱設計のシャシー)した頃には48Vシステムはなかった。モーター駆動の低速トルクによって重量がある縦置きモデルであっても、暴力的な加速ができるユニットになった。トヨタもメルセデスも10年前までは大排気量によって初動のストレスを感じさせない高級感ある走りを作ってきたけども、このシステムの導入により、高級車のユニットが大きく変わりつつある。
高速巡航性能に欠陥がありつつも、圧倒的な燃費性能を武器に販売を続けてきたTHSモデルだったけども、ここにきて方針が転換された。カーメディアも一般メディアもトヨタのTHSを「ストロングハイブリッド」と日本独自のガラパゴス用語で表現し、技術的な優位性を評価してきた。しかし欧州市場ではストップ&ゴーを強いられる市街地のタクシーなどでの利用が多くなっている。市街地を走るだけの商用車は、徹底的にBEVに置き換えてしまおうというのがEU委員会の方針だ(これに噛み付くトヨタ系論客ははっきり言って馬鹿)。
トヨタ初のマイルドハイブリッド・・・
日本のメディアは決して報じることはないだろうけども、BEVに喰われる運命のプリウスをトヨタはグローバルでそれほど重要視していない。BEVと共存しエンジン車として生き残る可能性が高いのはランクルやGRヤリスのような非電動モデルだと十分にわかっている。クラウンもプリウスの高級車版としてTHSばかりのラインナップが組まれたが、構造上は長距離ツアラーとして用を成さないため、北米での販売もCX-60に及ばない。
さすがにクラウンの刷新プロジェクトが大失敗だと不味いので、いよいよ「ストロングハイブリッド」のプロパガンダを放り投げて、トヨタが自己否定とも言える「マイルドハイブリッド」の採用へと舵を切った。1.5Lターボ&48Vで300psの新型ユニットが次世代のクラウンやアルファードに搭載される見通しだ。まだ実用化された訳ではないけども、新型フラッグシップの危機に際してトヨタの迅速かつ柔軟な姿勢は素晴らしいと思う。