2、アウディ
2000年代に「未来志向」の一変したデザイン展開で、欧州&中国市場を席巻し、日本市場でも一世風靡したアウディ。その大成功に続くべく、中村四郎氏が監修した日産の大規模なイメチェンが2000年代後半に行われた。折り悪くリーマンショックの影響を受け予定通りのスケジュールで新車発売ができず、低価格ブランド「ダットサン」を導入するなど日産の方針が二転三転して、やや停滞している間隙と突いて、MAZDAが先にラインナップの刷新を済ませてしまった。ローレンス=ヴァンデンアッカー(現ルノー)を追い出して、前田育男氏がデザイントップに就任し、非常に老獪に2010年の日産「エッセンス」のデザイン解釈を片っ端から拝借し、2011年に「魂動」デザインなるものをまとめ上げてしまった。
もちろん前田氏による「魂動」デザインの完成度は素晴らしいし、さらなる経年進化を果たしていて非常に素晴らしい仕事だと思うが、短期間でここまでの「名声」を得られたのは、アウディや日産といった21世紀型のプレミアム乗用車をいち早く発表した「お手本」もまた非常に優秀だったからだ。ビジネスはスピードが重要であるし、MAZDAよりもむしろメルセデスのラインナップ拡大とデザイン刷新のスピードこそがアウディや日産に大きな影響を及ぼしたかもしれない。メルセデスに加えてMAZDAのデザイン刷新が進み、かつてあれだけ輝いていたアウディデザインも市場全体の中で目立つ存在では無くなってしまった。プロポーションを重視するMAZDAに対して、どこかバランス感が無いアウディがやや「ピンボケ」した印象すらある。「キープのアウディ」と「進化のMAZDA」という対峙でアウディは存在感を発揮できなかったかもしれない・・・。