売る気の問題
日本のマスコミは伸びない賃金を悲観しているけども、アメリカの経済ジャーナリストの本では、他の国よりは物価統制が上手くできている日本に対してリスペクトさえ感じる。多くの営利企業にとっては価格を上げたい要求は当然にあるだろうから、ポジショントークとして「日本は貧乏」という声は聞こえてくるが、それをどう受け止めるかはリテラシーの問題だ。
マセラティ・グレカーレのベースモデルが約900万円する。縦置きシャシーに直4ターボ&マイルドハイブリッドを装備したグレードである。もちろんPHEVではない。これに対して満充電で600km航続できるピュアBEVのBMW「i4」が800万円で買える。価値観は人それぞれだけど、マセラティはブランド力を背景に吹っ掛けてきた感じがするし、それに対してBMWはかなり本気でBEVを売ろうとしている。
入門だけどエンスー向け
日本市場でマセラティの入門ユーザーを増やすならば、グレカーレはアルファロメオ・ステルヴィオを突き抜けて490万円くらいまで引き下げると有効だろう。同じ縦置きの設計であるCX-60が299万円まで下げられるのだから、490万円くらいのスタート価格が妥当だと思う。いくらハイエンドなブランドとはいえ、このクルマは誰でも楽々に扱えるごくごく普通のSUVである。8気筒エンジンで武装しているわけでもない。
グレカーレを選んでもマセラティのディーラーでは「入門車ユーザー」扱いされるので、特別な所有欲を満たしてくれる存在でもない。それでもドライブフィールを重視するユーザーに訴える縦置きシャシーにこだわっていて、日本でそこら中に走っている横置きエンジン&CVTの軽自動車と同じ設計のSUVとは一線を画す。つまり「白いレクサスのSUV」とは違ってクルマとしてのベーシックな価値は高い。