メルセデスのこだわり
高級セダンから連想される、メルセデスのSクラス、Eクラス、CLSクラスは、決して自動車評論家からウケの良いシリーズではない。福野礼一郎さんはここ数年のメルセデスに、あまりにも正直に文句を書き過ぎてしまったため、メルセデスのインポーターと修復不能な関係にまでなったらしい。メルセデスの上位グレードの縦置きエンジンモデルは、長年にわたってこだわりの自社開発トルコンATが自慢であるが、福野さんは露骨にBMWが使う外注のトルコンATこそが「至高」と書き続けていたから、キレられて当然だろう。
変速スピードなどの特定のパラメータでトルコンATの優劣をジャッジしたのは愚かだったかもしれない。BMW、マセラティ、アルファロメオ、ジャガーなどが使う「モジュラー1」と、レクサス、ボルボ、プジョーなどが使う「モジュラー2」はいずれも世界有数のサプライヤーが手がける完成度の高いトルコンATだとは思う。しかしミッションこそがクルマの乗り心地の肝で、自社開発にこだわるというメーカーのエゴはクルマ好きから支持される要素だ。
高級車とは・・・
自社開発ミッションでトルコンAT搭載の車を選ぶならば、輸入車だとメルセデス、日本車だとMAZDAということになる。他のブランドでは決して味わえない秘伝のフィールだ。実際のところ日本市場、北米市場、欧州市場など成熟市場においてこの2社の人気は根強い。メルセデスの上級セダンに対して、旧世代のLS460であれば、V8自然吸気に合ったトルク容量の大きな専用ATが組み合わされていたけども、乗り味の劣化がごまかしきれないストロングハイブリッドでは勝ち目はない。
北米市場の販売において、ブランド全体ではレクサスやテスラがメルセデスを上回ってはいるけども、上級セダンの販売に限定すれば、メルセデスの独走状態である。ストロングハイブリッドやBEVでは今のところは高級車としてのブランディングが成功しているとは言い難い。しかしメルセデスも完全にBEVへ移行する準備があることをかなり前に宣言している。高級セダン市場はどうなっていくのだろうか。