高級車は儲からない
567万円のCX-60が日本市場で予想を超えて売れてしまった。バブルの頃のトヨタ・セルシオが400万円台だったことを考えると、実質賃金の低下や国民負担率の上昇など意に介さない潤っている新人類が一定数いるようだ。MAZDAの場合は日本以上に北米での販売が好調なようで、同じく北米輸出モデルになったクラウンクロスオーバーの2倍くらいの販売台数を記録している。
MAZDAの高級モデルがいくら売れても、トヨタの利益が4〜5兆円で、MAZDAの利益が0.2〜0.3兆円なわけで、結局のところ高級車ではボッタクリ価格はできない。お金に余裕がある人々は、製品の品質を見る目がシビアであり、価値のないクルマに無駄な出費はしない。価格や燃費だけでクルマを選ぶ低価格車ユーザーに、ガソリンエンジンにCVTをポン付けした軽自動車もどきを、ダンピング価格で大量に売る方が、他社に介入させることなく巨額な利益を計上できる。
伝統からの脱皮
コスパの日本車、走りのドイツ車、デザインのイタリア・イギリス・フランス車というステレオタイプな特徴で語られる時代もあった。そんな過去の枠組みに反発するように、MAZDAは「走り(機能性)とデザイン」に軸足を移し、メルセデスは「コスパとデザイン」を追求するようになった。高級車市場で主導権を取るブランドの条件は、飽くなき付加価値の追求であることは間違いない。
クルマの価値を上げても儲からないことがわかっているのか、トヨタグループのレクサスはディーラーでのホスピタリティなどクルマとは別のところで勝負している。抜本的なプラットフォーム改革でもなければ、ES、IS、RX、NXなどの頭打ちな現状は何も変わらないけども、BEVブランドとして生まれ変わるまで沈黙を貫くのだろう。