「諦め」から始まる
ドイツや日本にかつての「自動車大国」としての存在感はなくなってきたように思う。2000年代のようなV8エンジンを積んだ高級サルーンが、これから復活するとは思えない。残念でしかないけども、メーカー側もユーザー側もすっかり「諦め」という感情を共有している。先代Eクラスでは1.5Lモデルが登場して、衝撃的ではあったが、さすがに新型では直4のみが日本導入になった。全く売れなかった先代の反省もあり価格も抑え気味だ。
「環境」という大正義によって、イケイケで排気量を増やしていたセダンの歴史は終わりを迎えた。10年くらい前からV8自然吸気のようなエンジンは許容されなくなり、8000rpm以上で競っていたアウディ、BMW、アルファロメオなどの高回転型の自然吸気エンジンは姿を消したが、この時(2010年頃)にセダンの未来が行き詰まりを迎え、終焉へと突き進むことは決まっていたのだろう。
高級セダンの条件
1000万円を下回る価格で販売されるメルセデスEクラスは、直4エンジンとはいえ、2020年代の常識的なパワーユニットとして避けられる理由にはならない。日本メーカーがEクラスをターゲットにした高級セダンを投入しようにも、上手くアピールできそうな手段もない。それでもラウンジでくつろぐように乗れる高級セダンのユーザーがいなくなった訳ではない。
メルセデス以外のメーカーが、スペックに振ったところで、環境性能で一般ユーザーから敬遠される。特に飛び道具もなくリーズナブルな価格を設定すれば、「華のないセダン」として市場で認知されない。東京の中心部(港区など)はもちろん、東京都や埼玉県の西端部(八王子市、所沢市)においても高級セダンを新車を買うならば「Eクラス1000万円」が基準になっている。1000万円という只者ではない価格とメルセデスの至高なブランド力のバランスが絶妙だ。