ユーザーの嗜好が大きく変わった
「スカクー」ことスカイラインクーペが日本向けも設定されていたV36世代のスカイラインは憧れの高級車だった。ただしクーペの方がキャラクターに合っていたかもしれない。現行のV37はメルセデス製の直4を搭載していた時期もあった。日産とメルセデスのアライアンスで、スカイライン(インフィニティQ50)、フーガ(インフィニティQ70)をCクラス、Eクラスと統合との噂もあったが、両陣営ともにBEVに注力する方針から実現することはなかった。
フーガは廃止され、Eクラスは高級セダンの「最低水準」になった。Eクラスに加えて、パナメーラ、5シリーズとBEVのタイカン、モデルSなど1000万円クラスが「セダン」と新定義になった。20年前のインテリアデザインを使う日本メーカーの中上級セダンと違って、中国や北米といった実際にセダンがたくさん売れている市場の最新のテイストを大きくフィードバックした輸入車高級セダンに、富裕層の人気が集中するのは無理もない。
新型Eクラスの活躍に期待
この状況をFCVとHEVだけの新型クラウンセダンや、タイ生産逆輸入のアコードが再定義するとも思えないし、既存のレクサスLSやGSが巻き返す予感もない。この絶望的な状況を前にスバル、MAZDA、日産はセダンの開発を諦めてしまった。どう計算しても投資を回収できる算段にはならない。もしMAZDAや日産が中上級セダンを新規導入するならば、中国企業とのアライアンスでデザインテイストをアップデートしていくしかないけど、そんなクルマが日本で売れる気がしない。
高級車市場のシェアを渇望するMAZDA、スバル、日産ならば、日本の老舗メーカーがゼロから設計し直した高級セダンとして飛び込む覚悟があっても良さそうだ。中国デザインを取り込んだ新型Eクラスは、日本市場に足りないものを補っている。もし販売が想像以上に伸びるならば、日本メーカーも新しい戦略を考えるのではないだろうか。