高級車を売るカラクリ
多くのカーメディアにおいては、昨今のセダンの販売不振は、日本メーカーの上級セダンのニーズを、アルファードなどが吸収したと説明されている。しかし現実には、800万円まで価格を上げたクラウンセダンやレクサスESはほとんど売れる見込みはないけども、同じ800万円でも多人数乗車のアルファードなら、残クレの利用の拡大もあって販売規模を維持できると考えたのだろう。トヨタが現実的な「戦略的シフト」を仕掛けたわけだ。
日本市場のトヨタシェアは45%に達している。1つのメーカーがこれだけ独占するなど他の国ではあり得ない状況だ。その大半はヤリス、カローラ、ハリアーなど基幹モデルを他社よりも手軽な価格で提供する低価格戦略の成果である。その上で囲い込んだユーザーを、800万円クラスの高級車へ誘導するために、7〜8人乗りのアルファードや、実質的に2シーターだけどもスーパースポーツのような加速性能を持つGRヤリスやレクサスLBXの拡販に力を入れている。
なぜセダンはHEV専用車なのか?
ホンダ・アコードとトヨタ・カムリが2010年代前半に相次いでHEV専用車になった。本来はクルマ好きなユーザーが好むフルサイズサルーンをHEV専用にしたために、特にアコードは販売を大きく減らした。縦置きエンジンのサルーン(マークXなど)も作っていたトヨタと、横置きのみのホンダでは同じ状況とは言えないが、北米と中国が主体であるアコードとカムリを、日本市場で非HEVで残すには変速機の供給に課題があったと思われる。
日本向けのアコードやカムリをICEのまま販売するには、他の日本生産の横置きエンジン車との共通化のためCVTを組み合わせるしかないが、2010年頃のホンダやトヨタには150ps級のCVTしかなく、この出力では非HEVのフルサイズセダンをメルセデスやBMWのようにダイナミックに走らせるには非力で、余計なコストをかけて北米工場向けミッション(横置き用トルコンAT)を導入する必要があった。