SNS社会の弊害
MAZDAはリーマンショックによる赤字転落とフォードグループからの離脱によって、慌ててコスト見直しを図った。先代ではアメリカ市場向けに特注されていたボデーで規格統一されたため、日本市場では先代よりも二回りくらい大きくなった。カムリ、アコード、ティアナも同様にアメリカサイズで販売されるようになったが、唯一のトルコンAT装備&MT併売でガソリンエンジンも用意されたアテンザの販売が大手日本メーカーを上回る事態になった。
「ドライブフィールの良いセダンが選ばれた」という、極めて自然なユーザー選択の結果ではあるけども、12年のライフサイクルを経てアテンザ(MAZDA6)も生産が終了してしまった。2010年代以降の情報技術の発達はユーザーのクルマ選びに大きな影響を与えている。上の世代にもSNSが広く認知されるようになったが、自己肯定感の低下を意識することが増えたのか、クルマや腕時計で心の隙間を埋める消費行動が増えている。その結果、SNSでドヤれる使い勝手を度外視したスポーツカーや希少な旧型車の人気が一気に高まった。
中流ハイソカーの消滅
自動車メーカーも開発段階で「インフラカー」なのか「SNSカー」なのかを明確に意識するようになっている。7〜8人乗りで目立つエクステリアのアルファードの人気は高まり、5人乗りで平凡なスタイルのカムリは見向きもされなくなる。いくらセダンで走りの質を訴求したところで、重たい4ドアボデーのHEV専用車では、高出力化するスポーツカーとの格差はどんどん広がる。
メルセデスやBMWでは主力サルーンはユーザーの嗜好を捉えた開発を行なっているが、HEV専用やCVT投入など保守的ユーザーの期待をぶった斬るような刷新をしたことが、日本メーカー・セダンの絶滅につながったと言わざるを得ない。そんな中で最後まで諦めない姿勢を見せているのがホンダ・アコードだ。2035年のエンジン終了まで、日本メーカーのセダンとして生き残るかもしれない(外国生産車だけど・・・)。