HEVの矛盾
2011年頃に日本のアクアでしか売れないHEVの惨状を見て、日産はHEVの開発を凍結し、BEVに注力したと言われている。もちろんHEVよりBEVの方が走りが良いという技術者の意見を受けての決断だったと思う。HEVのようにトルク特性が全く違う動力源(エンジンとモーター)を協調させると、どうしても乗り味に違和感が入ってしまう。理論的には効率重視のクルマができるけども、それが後世に名車として語り継がれることはないだろう。
トヨタクラウンは2008年に、日産スカイラインは2014年にHEVが導入されているが、3.5LのV6エンジンで9km/Lくらいのモード燃費を、HEV化で12km/Lくらいに改善したようだけど、どちらも走りの質が大幅に低下したという意見もあり、さらに販売価格も100万円近く上昇するなど、予想はしていただろうが販売面でもかなり厳しい結果に終わった。
イノベーションは続く
トヨタとホンダがこの時期にHEVの完成度を高めていれば、あるいは日産がエストロニックCVTで妥協せずに質の高いICEやBEVを開発していれば、現在の日本車セダンの壊滅的な状況は変えられたかもしれない。しかし2009年リーマンショックでトヨタ、日産は赤字転落し、2011年には東日本大震災でサプライチェーンの弱点が露呈し、経営の見直しが大きく図られた時期だったので、まあ仕方がなかったとしか言いようがない。
市場環境が目まぐるしく変わる中で、中長期的な計画で開発を行わざるを得ない自動車メーカーは、経営基盤の安定のために収益性(利益率)の改善に取り組むのも理解できる。その結果トヨタではカムリではなくアルファードが、ホンダではアコードへの投資よりもN-BOXの開発が優先された。リーマン&震災から10年以上が経過し、トヨタとホンダの収益は大きく改善され、再び独創性のあるスポーツカーやサルーンへの開発に回帰しつつある。