苦境をチャンスに
2013年頃には円高を背景に、本体価格が300万円を下回るメルセデスAクラス、VWゴルフ、ボルボV40、アウディA3などが、それぞれに月に1000台を超える勢いで売れていた。ヘッドハンティングで獲得した実績のあるデザイナーに統括された洗練のデザインを持つCセグの輸入車に対して、車格が上のはずのDセグのアコード、カムリ、ティアナの冴えないデザインは、完全なる世代の違いすら感じさせた。
そんな中で、2012年に登場したMAZDAアテンザは、デザインアイディアこそ日産のコンセプトカー「エッセンス」をパクったとされているが、メルセデスやBMWに負けないディーゼルエンジンを搭載し、WCOTY受賞(デミオ)で実績もある前田育男さんの統括するブランドデザインは、世界を席巻しつつあったゴードン・ワグナー率いるメルセデスと互角に渡りあった。
決意表明
アテンザは12年のロングサイクルの途中でMAZDA6に名前を変えたりしたが、主戦場の中国、北米での販売が低迷し後継モデルの開発が断念され、絶版となった。正確には中国市場の需要はEG-6という長安マツダが開発・製造するOEMのBEVサルーンに受け継がれた。レガシィB4、カムリ、MAZDA6が揃って撤退した状況ではあるが、2024年にトヨタ、スバル、MAZDAが合同で200〜400ps級エンジンの開発を発表している。
BYDやテスラだけでなく、ホンダ、BMW、ポルシェ、マセラティ、アルファロメオといった日本でも人気のブランドが大都市向けBEVサルーンに舵を切る中で、BEVのジャーク感ある加速や自由度の高いスタイリングに対抗できるICEユニットを3社が合同で発表したことは、スポーツカーだけでなくセダンのリバイバルへの「意思表明」で間違いないだろう。