3、カローラがCセグ・ロードカーを衰退させた
日本市場向けは全車HEVとなったカローラ(全4車種)は、トヨタのラインナップの中では、価格の割にしっかりとした作り込みで納得できるクルマである。現行は、クラウンに先駆けてグローバルにHEVを拡販するモデルとして誕生した。日本市場では先代カローラ(ヴェッツベース)の後継というより、カローラランクス、オーリスの欧州戦略車(欧州カローラ)の系譜を受け継ぐ設計で、セダン、ハッチバック、ワゴン、SUVの4タイプが一括企画された。
Cセグ(通称ゴルフクラス)は、多くの総合自動車メーカーにとって技術革新の中心となるセグメントで、近年はTCR規格でのツアーレースなどが広がりを見せていたが、現行カローラ投入の2019年以降からWTCRやTCRジャパンの終了など急速に終焉を迎えた。参加していたVW、ルノー、フォード、ヒュンダイ、キア、ホンダ、プジョー、アルファロメオなどが欧州の排ガス規制でBEV開発に舵を切ったわけだが、そんな市場にGRカローラを引き連れてトヨタがやってきた。
北米市場でシビックに対峙するため2Lのダイナミックフォースエンジンを開発し、シャシー性能と静粛性を向上するため、MAZDAのスカイアクティブ・シャシーをコピーする戦略を採った。2L自然吸気で176ps / 6600rpmを絞り出すホンダを彷彿とさせるハイスペックエンジンに、MAZDAレベルの静粛性が加わったボデーは、短い期間ではあったが日本市場でもスポーツとクロス(その前にツーリングの限定もあった)で販売された。
シビックやMAZDA3が「選ばれるためのクルマ作り」に徹する中で、カローラは価格競争で勝つためにパドルシフトやヘッドアップディスプレーなどを外し、本来はすべての乗用車で最高のパフォーマンスが発揮できるはずのCセグで、徹底して機能を齟齬落としたクルマを仕立てた。MAZDA3をコピーしたはずなのに、着座位置はかなり前寄りのファミリーカー仕立てで、リアシートの居住性は確保されている。前乗りポジションはエレガントには見えない。