アウディの成功(1998〜)
1998年にセンセーショナルな「アウディTT」を発売し、「ドイツのスバル」みたいなマニアックなブランドが一気に世界の最先端で輝くラグジュアリー・ブランドに変わった。2001年のWTO加盟以降に市場開放が進んだ中国市場において、高級ブランドでは圧倒的な販売台数を誇った。中国市場向けにノックダウンの小型車ばかりを投入していたトヨタやホンダは、慌ててカムリやアコードを用意したけども、それでもまさか中国市場がレクサスやアキュラのような高級モデルを買うとは思っていなかったらしい。そんな日本メーカーとメルセデス、BMWの隙をうまく突いた格好になった。
日産も輝く
アウディTTと同じ頃に、日産に誕生したZ33型フェアレディZは、プリンス系のスカイラインのプラットフォームを使ったモデルに日産本流の「フェアレディZ」の名称が付けられ、中村史郎の冴え渡るデザインが与えられ、カルロス=ゴーンのもとで日産に新しいアイデンティティをもたらすモデルとして成功を収めた。その後アウディと日産はそれぞれ「R8」「GT-R」というスーパースポーツをブランドの頂点に配置したが、この辺りから何だか雲行きが怪しくなった。
転機
2007年のリーマンショックで落ち込みを見せるも、そこからの巻き返し相場もあって、日米中の各市場でも波に乗って資産形成した人々が「R8」や「GT-R」を買ったりしたようだ。R8やGT-Rがイメージリーダーとなってから、あれだけセンセーショナルだったTTとフェアレディZの人気は一気に霞んでしまった(スープラが発売になって86の人気も同じ道を辿るだろう)。GT-Rの登場によってZだけでなく、ランエボやWRXも色褪せてしまったし、アウディにR8を出されてしまったメルセデスやBMWはスーパースポーツへの情熱を失ってしまった・・・。
A4とスカイライン
アウディと日産の共通点は他にもある。Dセグのプレミアムサルーン市場に投入されているスカイライン(インフィニティQ50)とアウディA4は、どちらも設計に理想を追求しすぎて空中分解気味になった。細かいことが別に機会にでも書くけど、他社のライバルモデルと比べて複雑なフロントサスやステアリング機構を持ち込んだけど目立つ結果にはつながらなかった。結果的にずっとラインナップされ続けてきたけども、商品として適正なポジションにうまく着地できずにマイナーなモデルのままだった。どうやらレクサスISも同じ罠にハマったようだ。
アウディと日産の良さは伝わらない
ちょっと強烈で失礼な話だけども、世界中でプレミアムブランドのDセグを買う人々は、アウディや日産のように技術でマウンティングしたがるブランドとは相性が良くないのかもしれない。プレミアムブランドに何を求めているか!?という問いに「お手軽な高級感」とか平気で答えてくれそう。それは本物志向のブランドにとっては決して上客という訳ではない(メルセデス、BMW、レクサスは上手くカモにしてるが・・・)。結局プレミアムDセグでは、同一モデルに6気筒ターボの高性能グレードと、プリウスのユニットのような燃費スペシャルグレードが用意されれば、ほぼ後者しか売れないのが現実。
いいクルマほど売れないDセグ市場
クルマ雑誌にしてみればプレミアムDセグなんて最高のコンテンツなんだろうけども、アウディA4、A5、スカイライン、ジャガーXE、ジュリアといった縦置きユニットでフロントにダブルウィッシュボーンを備えた高性能モデルはどれも「不人気」のレッテルを貼られる。代わりに売れているのは旧型三菱のFFプラットフォームにクーペ風味のボデーを与えられたメルセデスCLAだったりする。良いクルマを作っても、それを伝える力や、納得させる価格設定など商品パッケージとしての完成度を高めることができなければ、偽物にむざむざと市場を奪われてしまう。
悪貨は良貨を駆逐する
アウディA4はジュリアよりも売れていないらしい。アウディっぽい演出の内装を取り入れて、信頼の三菱シャシーを使って作ったCLAにシェアをごっそり奪われた。それに対抗するためにアウディもこれまた信頼性が高いフォルクスワーゲンシャシーを使ったアウディA3セダンで対抗したのだけど、さらにアウディA4のシェアを奪っただけに終わった・・・。
TOYOTAとMAZDAも・・・
軽く吹っ飛ぶような「軽薄」な価値観でクルマ趣味を語る困ったヤツが多すぎる(そりゃオマエだろ)。VWがちょっとやらかしただけで、ドイツブランドからさっさと逃げ出す。カーメディアも平気でドイツメーカー車を批判するようになった。代わりにMAZDAとTOYOTAですか・・・どちらも2003年頃の方が腰を据えた良いクルマを作っていたし、海外でも絶賛されていたんだけどなー。今のMAZDA&TOYOTAに「趣味」を語る余地があるんだろうか!?
市場は・・・本物を求めている(はず)
アウディのオリジナル開発系統は、ポルシェと合併されることになったらしい。次世代モデルが出てくるまでもうちょっと時間がかかりそうだ。ゴーンを追放した日産は再建に燃えていると言っているが・・・。今の日産の経営陣には、「日産のクルマとは何か!?」に明確な答えを持っていて、リー=アイアコッカやセルジオ=マルキオンネのように華やかなラインナップ構築で市場を正面突破するだけの胆力があるだろうか。
ブランド価値
日産本来の骨太なクルマ作りを生かして、西日本各社のポンコツモデルを木端微塵にするくらいの破壊力を見せつける!!これが日産に求められているカタルシスなんだと思う。もちろんこれが経営上の正解ではないのかもしれない。アウディも日産も、これまでの歩みで積み上げてきたブランド価値の中には「ファミリーカー」「エコカー」「コンパクトカー」・・・といった要素はほとんどない。
再び脚光を浴びる!?
アウディは一つのブランド内に「インゴルシュタット→シュツットガルト」と「ヴォルフスブルク」が同居するのは、経営上やむを得ないことだろう。日産ブランドも「上三川」と「追浜・苅田」で違う方向を追うのも仕方ないことだ(今では三菱の「倉敷」製Kカーもラインナップされている)。今更だけどインフィニティを日本に導入してもいいんじゃないかと思う。日産がいよいよVR30DDTTというアウディユニットを徹底マークした高性能ターボを日本に投入するらしい。日本で「プレミアム」ってことで売られているメルセデス、BMW、レクサスの中国向けターボがどれだけつまらないものだったかを少しは証明してくれるだろう・・・。