前回記事へのリンク
新型BMW3シリーズ と13ブランドを比較
前回に引き続き「中型車13ブランド」によるDセグサルーンの比較です。
13位 レガシィB4 23点
11位 VWアルテオン ボルボS60 24点
9位 アウディA4 トヨタマークX 25点
どこのメーカーも「世界トップレベル」を自認して米欧日中などの主要市場に堂々と参入しているブランドばかりなので、やはり拮抗しています。それでも9〜13位を見てもかなり個性の違いを見てとることができるのがDセグの良さかもしれない。そしてついでに言っておけば、どれを選んでもそこそこ満足できる。最下位のレガシィB4だって満足度は高いですしね・・・。
第7位 アルファロメオ・ジュリア 27点
(静粛3、ハンドリング5、出力4、燃費2、インテリア3、エクステリア2、サス4、ミッション4)
誤解を承知で言ってしまえば今のアルファロメオは、古き良きイタリア自動車産業へのレクイエムとして、ただただ非営利覚悟でフィアット社の慈善事業としてそこにあるだけかもしれないが、それでも静かに世界中のGTカーが好きな人々に「決起」を訴えているようだ。「肩の力を抜いて走りたいならMAZDAを買え!!」「お金が有り余っているならポルシェを買え!!」「お友達が欲しいならビーエムを買え!!」「スマートに見られたいならメルセデスを買え!!」・・・そんな中途半端でへなちょこなユーザーとは相性がとことん悪いであろうアルファロメオ・ジュリア。
グランドツアラーの原型を強く意識して、アルプスを軽く越えて行けそうな、どこまでもアグレッシブな機動性を追求したパッケージ。「ハンドリング」と「出力」には妥協はしない、さらにサスとミッションのフィールがまともならばどこまでも走って行ける。インテリアの質感!?このクルマはマツダじゃないんだぜ・・・。けども決して悪くはないって。クラスなりのモノが備わっている。
アルファロメオは、ウイスキーに必要な要素は全てが濃厚なアイラのシングルモルトってところだろうか? それに対してMAZDAはすっかりスペイサイドの華やかさが板についてきた。メルセデスは・・・XOのブランデー!?ポルシェはシャンパン、BMWはご機嫌なビールだね。
第7位 BMW3シリーズ 27点
(静粛3、ハンドリング4、出力2、燃費4、インテリア3、エクステリア3、サス4、ミッション4)
もはや3シリーズは600万円にはほぼ収まらない器になってしまったようだ・・・。5/7シリーズと共通の設計になりクルマが骨太で高い限界値を示すようになった。日産が400psのV6モデルを発売するものだから、対抗して新型M340iの直6は382psまで出力アップした。インフィニティQ50に対抗できるレベルのシャシーを得ていよいよ3シリーズも大きく羽ばたくべく、7世代目の大改革なのに、日本のカーメディアはその意味がわかっていないようだ。
北米市場でのスタンダードなグレードは330iで40000ドルで販売されている。これが日本だと630万円になってしまうのが痛い。出力はガソリン、ディーゼル共に200psに及ばず「2」の評価になってしまう。330iを何とか本体価格で550万円くらいで手を打てないものだろうか(来年の未使用車実勢価格はこれより下の可能性は高いが)。シャシーのレベルは大幅に上がったものの、日本市場専用モデルらしい320iのユニットではそのポテンシャルは宝の持ち腐れだ。320dの経済性だけが強調できるポイントか・・・。
第6位 ジャガーXE 28点
(静粛3、ハンドリング5、出力3、燃費2、インテリア4、エクステリア3、サス4、ミッション4)
フォードからタタへ経営権が移り、心機一転を目指したジャガーが期待を込めて新設計した「XE」だけども、世界的なSUVブームの中でプレミアムDセグのシェアは泡のように消え失せる大誤算に巻き込まれ、今ではすっかりSUV推しのEペース&Iペースのブランドになってしまった。英国メーカーにとってDセグサルーンは鬼門。過去にローバー600(1993〜)、ローバー75(1998〜)、ジャガーXタイプ(2001〜)がそれぞれ優れた性能でシェア拡大を果たしたが、いずれも基本設計はホンダアコード&マツダアテンザ。ローバー75に至っては経営権を簒奪したBMWによってコンセプトをガラリと変えられて小さなレトロサルーンという滑稽なコンセプトにされてしまった・・・。
記念すべき英国ブランドのオリジナルDセグ?じゃないかと思われるのが、2014年に発売されたこのジャガーXEですが、登場があまりにも遅すぎたかも。すでにプレミアムDセグでは、各国基準で横滑り防止装置が義務化され走りはどんどんつまらないものになるし、アジア&アフリカでも容易に現地生産できるよう、簡易化されたエンジン、ミッションが3シリーズ&Cクラスで当たり前になっていて、VWゴルフやホンダフィットといったグローバル生産モデルと変わらない品質になっている。もはやジャガー、レクサス、日産、アルファロメオが本国工場でプレミアムDセグを生産しても拡販は難しい。3シリーズやCクラスはすでにASEAN各国から西アジア圏に幅広く生産工場を持っていて、利益確保&デフレ耐性に強いビジネスをしている。
もちろん中国向けは当局から中国生産が求められるのでジャガーランドローバーも合弁先を確保しているし、親会社タタの地元インドでもすでに生産が始まっているが、メルセデスやBMWのビジネスは早い。マレーシア、トルコ、ベトナム、インドネシア、タイ、メキシコなどに広がっている。ジャガーのようにインジウムという高性能を狙ったエンジン作りはDセグではトレンドではなくなっていて、ドイツ勢ではモジュラーユニットが主流。アルミを多様したボデーも多国籍生産には不向きだ。それでもジャガーはドイツ勢の真似はせずに、スロバキアにアルミ加工の日本のサプライヤーを工場ごと呼び寄せて一大拠点を作ろうとしている。3シリーズやCクラスのクルマ作りが市場に見限られるようになればジャガーXEの時代がやってくるかもしれないが・・・。
第4位 ホンダ・インサイト 29点
(静粛4、ハンドリング3、出力3、燃費5、インテリア3、エクステリア4、サス4、ミッション3)
英国ローバーとの二人三脚の関係が、某ドイツメーカーの横暴によって破壊されてから、欧州市場のDセグに革命を起こし続けてきたホンダによる「欧州離れ」が止まらない。いよいよブレクジットによってトドメを刺された感じだ。すでに2013年に登場した9代目アコード(日本では現役)から、ボデーが北米&中国サイズに統一されていて、欧州での販売は行われていない。英国ホンダのラインナップはシビック(4door/5door/typeR)、フィット、CR-V、ヴェゼル、NSXのみで、間も無く欧州向けに小型EVの「HONDA e」が発売される予定。
北米市場でもアコードは4900mm級のフルサイズ級ボデーですでに3シリーズのライバルではなく、変わってDセグのど真ん中に投入されているのがインサイトなので、今回はこれをホンダの代表とさせてもらった。ベストカーの最新号で、まさかの水野和敏氏による大バッシングに遭っていたが、実際のところこのインサイトはドライブ、仕事、買い物、旅行・・・どのシーンにもスマートにハマりそうな完成度の高いコンセプトは、そんなにお目にかかれるものではないと思う。EセグではなくDセグを選ぶユーザーの多くは、「駐車スペースや転回スペースでいちいち余計な気苦労をしたくない」「長距離ドライブでも負担感の少ない省エネ設計」「車格はDセグだけどこだわりのエクステリア&動力性能」などを求めるものだがそれらを十分に満たしている。むやみやたらと金持ちに見られたい人にはちょっと向かないとは思うけど・・・。