ビーエムの良さとは!?
いよいよBMWの復活の時・・・って機運は全くないけど、BMWに新しく加わった8シリーズ(正確には6シリーズの後継らしい)は、久々にやってくれたんじゃないかと思う。とにかくデザイナーが天才過ぎる。BMWが日本で一番売れていた15年くらい前(リーマンショック前夜)に君臨したクリス=バングルのデザインを超えるパワーを感じる。批判的な意見もそれなりにあるだろうけど、これまで試してきたビーエム車はデザインによる表面的なインプレッションよりもドライビングフィールをよく覚えているモデルが多いわけで・・・。
綺麗だけではダメ!?
何も考えてなさそうに見えるけど、緻密にビーエムの復活劇を企んでいる。単純にスタイリッシュという表層的な意味においては、X2や2シリーズグランクーペの方が評価は高いのかもしれない。特に「最近の」MAZDAはカッコいいなどと何のためらいもなく発言してしまう「軽薄」な人々(自動車ライター連中レベルの思考の人)を捕まえるにはさぞかし都合がいいだろう。しかし7シリーズや8シリーズを同じ方法論でデザインしたら・・・あの素晴らしいBMWi8の二の舞になってしまうだろう。MAZDAもi8も透き通るように綺麗なスタイルだけども、「でっかいビーエム」はそれらとは違う存在であって欲しい。
見切り発車!!
5シリーズ以上のBMWのガソリンターボ車には48Vマイルドハイブリッドが順次配備されていくのだろうけど、新生BMWの象徴として新しいフラッグシップに据えられた8シリーズが、それを待たずに「見切り発車」したところに独特のアイデンティティを感じる。レクサスやアウディは上級モデルの価値を証明するために、徹底して「機能性」の追加によってヒエラルキーを演出するけども、BMWの考え方はだいぶ違うようだ。
48Vなんてどーでもいい・・・
メルセデスやアウディがフラッグシップに有難がって取り付けている48Vマイルドハイブリッドは、ある意味で欧州市場の法令を遵守するために取り付けた装置に過ぎず、MAZDAやVWのメイングレード車にも同様のものが使われているし、マイルドハイブリッドという機構は、日本では軽自動車にも使われているほどごくごく普及したものだ。それが6気筒くらいのエンジンに追加されると、それなりにいい塩梅らしい。トヨタ&ホンダのHEV勢に対抗してセダン&SUV市場をひっくり返すポテンシャルすらあるらしい。MAZDAとVWが相乗りしているのだから技術的にガチなのだろう・・・。
マスってわけではない
MAZDAを強烈なまでの哲学で引っ張る前田育男さんが、「ビーエムはマスに落ちた」とあざ笑っていたけども、確かに発売される車種がちょっと多過ぎるかもしれない。少数精鋭のクオリティ主義を採っていた90年代までのビーエムから一転し、MINIを育み、SUVラインナップで存在感を発揮した2000年以降のイメチェンはファンの間で賛否両論あったようだ。しかし2020年を迎えて再び個性豊かなユーザーとそれぞれに向き合うだけのラインナップ作りが完了してきたようだ。
「作り分け」のトップランナー
高性能車としてのビーエムは「M」へと集約され、「無印」ラインナップにおいては、ピュアに「ステータス」を求めるユーザーにはリーズナブルな「奇数ライン」を、より自由な「個性」を求めるユーザーには大いなるこだわりを作り込んだ「偶数ライン」を選べるように配慮している。ビーエムの日本市場での正規価格はともかく、トヨタやMAZDAよりもユーザーにより多くの選択肢を与えていることはもっと評価されてもいいかもしれない。X1とX2では見るからに別のクルマであるし、7シリーズと8シリーズもだいぶ好みが分かれる。
港区向け!?
ほとんどのラインナップが5万ドル以内で買えてしまう米国市場と違って、日本での正規価格は確かに割高感がある。日銀の量的緩和がまだまだ中途半端なのかもしれないが、新車価格はASEAN地域での価格に近い。シンガポールや香港と同程度の平均所得を誇る東京都港区(年収1200万円くらい)にはちょうどいい価格設定なのかもしれない。これが東京都世田谷区になると高齢化の影響もあってか半減してしまう。港区はビーエムで、世田谷区はMINI・・・道幅もちょうどいい。
景気の良い街
8シリーズのような大きなビーエムは、それこそ港区やシンガポール、香港、カタール、ドバイのためのクルマなんだろう。平均年収10万ドル以上の地域で、さらに上流の生活を送っている年収30万ドルクラスの乗り物だ。世田谷区くらいの水準にあるオーストラリア、カナダといった年収6万ドルの地域では、大きなビーエムではなくて、小さなビーエムかMAZDAが人気らしい。練馬区くらいになるとさらに年収4万ドル台まで低下する。この辺の水準まで下がると「クルマ離れ」がより実感できるし、「所有しない街」になっていくのだろう。
唯一無二の幸福感
なんだかお伽話のようだけど、「でっかいビーエム」は経済発展の象徴と言えるかもしれない。でっかいベンツやでっかいレクサスは中古車市場でびっくりするぐらいに低価格で調達可能だけど、歴代の7シリーズはなかなかの「工芸品」だと言える。探せばボロボロのものが手頃な価格で手にはいるけど台数はとても少ない。そこに新たに投入された8シリーズは、なかなかの「婆娑羅」な雰囲気を持っている。こんなのがたくさん走っている街はさぞ景気がいいだろうな・・・。
レクサスLSは・・・
クソ真面目な話をすると、レクサスLSが現行モデルになってやや批判を浴びた。1989年に登場して以来、日本の自動車作りの象徴とすら言われてきたセルシオ/レクサスLSの栄光の系譜を、世界のトレンド(社長の趣味?)に乗っかって安易に捻じ曲げたという失望の念がこのシリーズを愛した日本の男たちから湧き上がった。レクサスもビーエムのようにあっさりとLSを「キャラ分け」をしてしまえば良かったのかもしれない。7シリーズと8シリーズのように作り分ける意味はトヨタの経営上はリスクでしかなかったのか!?
支持された「作り分け」
レクサスの基準で考えれば、7シリーズ、8シリーズの作り分けは「無謀」なんだけど、クルマ好きには確実に響くわけで、ビーエムの発表によると、新たに設定した「フラッグシップライン」(7、8、X7)の販売は極めて好調とのこと。そりゃそーだ、魅力あるもん。そこそこお金持っていて、オーデマピゲとか買っちゃう人にとっては、でっかくて最新家電のような新機能が満載された昨今のフラッグシップよりも、直感的にクルマの本質を訴えてくる。i8はちょっと違うな・・・と感じてしまうコンサバな人にとっては消去法で選べてしまうイージーさ。
Lセグはビーエムの勝ちだ!!
8シリーズの魅力とは、アウディやレクサスをそれなりに研究していて、内装など以前のBMWよりもかなりオシャレになっている部分が見られるのだけど、本質の部分では「ビーエムが考える最良のグランドツアラー」というコンサバな信念を保持している。メルセデスSクラス、レクサスLS、アウディA7/A8が「家電化」によって脱クルマ的なアピールをする中で、ビーエムは「走る道具」です。走る楽しさを放棄しません。ハンズオフは渋滞時のみ使えます・・・って感じがとても心地よい。もっと売れて欲しいクルマだ。(オマエが買えよ・・・)
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