トヨタ・アクア
2011年HVの救世主が現る
今や世界市場を自在に闊歩する無敵のトヨタだけども、2010年頃は先行き不安な中でかなりの「ダークサイド」に落ちかけていたらしい(モリゾー関連本による)。1997年のプリウス発売以来、なりふり構わないダンピングでHV市場のライバルのホンダを振り落としてはいたけども、トヨタ車自体の評価は決して高くなかった。HVとしてプリウス(3代目)やSAIを販売していたが認知度はそれほど高くなく、率先してHVを選ぶ人もまだまだ少なかったように思う。今でこそ違和感はあまりないけど、ボンネットの低いスポーツセダンがまだまだたくさん走っている当時は、全体に厚みがあって太く見えるプリウス&SAIのボデーへの拒絶反応もあったようで、「HV=ダサい」みたいなイメージが定着しつつあった。そんな状況を打破すべく仕掛けたのが、2010年のカムリHVと、2011年のアクアで、どちらも非HVのセダンやハッチバックとしても十分にありそうなデザインだった。
「確変デザイン」の伝統
トヨタのデザインは凄い。プリウス(3代目)もSAIも2021年の視点で見れば結構センス良いデザインである。2010年のカムリHVのデザインは相当に古臭く見える。そして驚きなのがデビューから11年が経過しつつあるアクアのデザインは「普遍的」な美が宿っている。30ソアラ、80スープラ、ヴェロッサ、最終型セリカなどの「トヨタ確変デザイン」の名車シリーズの中にこの初代アクアも入れておきたい。奇跡的なデザイン、驚異的な燃費、当時のリッターカーとは一線を画す重厚感ある乗り味の「3点」が揃っていて、シフトレバーも従来のガソリン車に準じた仕様になっていて違和感もない。このクルマを考えた人は天才。欧州やアメリカ、韓国、中国のブランドがとりあえずデザインだけでも真似するのも無理はない。