ホンダ・フリード
BMWのように走るミニバン
先代モデルにあたる「モビリオ」はフィットベースでスライドドアを備えた3列シート車だったけども、やたらと開放感あるサイドウインドーのせいか、デザイン面であまり「クルマ=マシン」といった印象は薄く、どこか公共交通機関をイメージさせるような小ざっぱりした印象だった。「走りのホンダ」というより女性向けを意識した設計だったらしい。そんなモビリオの後継として2008年に登場したフリードは、2000年代特有の「スポーツセダンではなくミニバンを買え!!」という社会の抑圧と、「自在に走れるマシンが欲しい」という根源的な欲求の上手い具合な落としどころを用意できたことがヒットにつながったようだ。初代オデッセイなどもそうだけど、3列シート車に無理やりでも「走り」を加えて違いを生み出すのはホンダのお家芸。
特別なクルマ
出力ピークが6600rpmに設定され、1.5L自然吸気で130psくらいを軽く捻り出すホンダVテック搭載ユニットは、スペックを見ても最新のトヨタ・ヴィッツに搭載されている「ダイナミックフォースエンジン」は、このホンダユニットをベンチマークしていることがわかる。フリードは単純なスペックで評価するなら、シエンタにダイナミックフォースエンジン1.5Lを搭載したようなものだ。シャシーはフィットのセンタータンクを踏襲した低重心&低床設計であり、ハンドリング、ブレーキング、フラット感など5ナンバーのスライドドア車とは思えない仕上がり。トヨタからしてみたらシエンタをフリードのレベルまで作りこむ意味などないのかもしれないが、今のホンダ車でトヨタに大きなアドバンテージが感じられるのは、レジェンド、アコード、インサイト、オデッセイなどの上級モデルと、このフリードだけなんじゃないかと思う。