巧みな技術戦略
シビックとゴルフは80年代からの高速モータリゼーションの中でも主役を張った。簡易で高効率なだけのシステムでは技術がひと回りすればアドバンテージは失われる。1972年に登場した初代シビックの最高速度は145km/hで、1968年登場のダットサン・フェアレディが日本車で初めて200km/hを超える最高速度を達成していたり、他の日産スカイラインGT-R、MAZDサバンナ、三菱コルトが1969年の段階で190km/h以上だったのことから考えても、環境性能に大きく振っていることがわかる。
環境性能の高さで普及したはずのシビックとゴルフだけども、一部のグレードは90年代にはどちらも市販車最速レベルにまでその走行性能を飛躍的に伸ばした。両陣営ともにアウトバーンの速度無制限区間でメルセデスやBMWの最速モデルと遜色ない高速巡行性が発揮できるレベルを目指して開発が進められたというから、見事なまでの変わり身である。FF=低燃費のためのつまらないクルマ というイメージを一気に覆す企業努力がそこにはあった。
昔のゴルフと最新のゴルフ
2代目ゴルフに乗ったことがある。焼玉エンジンか!?ってくらいにポンポンと荒々しいエンジン音が印象的で、車重の軽さもあってパワフルに駆動した。サイズは5ナンバーの小型車なんだけども、エンジンはしっかり1.8Lのミドルクラスでなので同時代の日本車よりも断然に出足が良い。90年代の欧州メーカーの小型車はとにかくエンジン音が大きくて、輸入車に乗ってるという満足感に溢れていた。車内で会話はできないけど。
2010年代の7代目ゴルフのGTIは、輸入車らしい粗野なフィールが徹底的に排除されていて、動き出しからBMWのような滑らかさが印象的だった。横置きFFの軽い設計には十分過ぎる出力(220ps)で、エンジンは唸らないし、足回りから余計なガタつきやロードノイズもなく、大きめの突き上げがあってもバタつくことはなくフラットで、クルマ全体を見ることなく乗り心地だけならば高級車と言って差し支えない仕上がりだ。本体価格は430万円くらいだったと思う。