クラウンとLS
東京のど真ん中を走っているセダンは、TAXIやPCを除けば、メルセデス、アウディ、マセラティなどの輸入ブランドが圧倒的に多く目に付く。先代まで圧倒的なシェアで君臨していたはずの日本製セダンの雄・クラウンは、1800mm以下に車幅が抑えられた異形ゆえに、かなり古い世代のクルマに見えてしまうからだろうか、東京の風景からは急速に姿を消しつつある。
北米基準で作られているレクサスのLSに関しても、現行モデルよもリアエンブレムに「LS460」と掲げる旧世代の方が高級車の風格がある。クルマ好きならV8搭載の素性の良いセダンだとわかるというバイアスもあるかもしれない。ドイツ車相手に一歩も引けを取らない旧世代のLSが、かなり眩しい存在だったゆえに、現行のややエコなユニットを搭載したLSはあまり魅力が伝わってこない。GSが廃止の後に導入されたセカンドグレードのESに至っては、滅多に見かけることもない幻の存在だ。
高級セダン市場は崩壊した
ここ数年でマークX、レガシィB4、フーガ、ティアナ、カムリ、MAZDA6と次々に日本生産のセダンが消えていった。生き残っているのはDセグ以上だと、レクサスの3モデルとクラウンセダン、スカイラインくらいだ。アコードはすでに逆輸入モデルになっている。これだけライバルが廃止になれば、生き残った同ジャンルのクルマの販売は上向きそうなものだけど、全く販売に伸びは見られない。セダンに対してユーザーの選択は厳しい。
誰も言いたくはないことだけど、この10年余りでSNSで承認欲求を欲しがるユーザーが増えてしまった結果だと思う。特に見栄を張るためのクルマとなっている高級セダンの市場は大きく影響を受けてしまった。結局のところ「メルセデスEクラス」より下の車格のセダンに関しては、もはや高級車とすら認知されないから、すっかり購入理由がなくなってしまった。中古車も二束三文でしかない。