トヨタとVWを同時に相手する
CX-30ではホイールベースを詰めて、トヨタやVWのCセグのど真ん中のサイズに落とし込んできた。MAZDAの歴史を振り返れば、ファミリアの時代にカローラと激闘し、初代アクセラからの世界的大ヒットは欧州市場でVWゴルフとの「世紀の対立」によって一定の宣伝効果を得たこともあった。そんな過去の経験があるので、カローラやゴルフが有力な市場での立ち振る舞いは十分に心得ているようだ。
先代のアクセラ(3代目)も、トヨタ、VWとのホイールベースの差別化によって、独自の市場を切り開いてきた。激戦区を言われるCセグで存在感を見せ、カローラやゴルフにこそ及ばないが、世界有数のシェア(年40万台規模)を積み上げた。先代が獲得した台数を現行モデルではロードカー(MAZDA3)とSUV(CX-30)で20万台規模に分け合う形になっている。しかしパワーユニットは共通化されているので、40万台規模のスケールを活かして幅広い種類のエンジンが投入されている。
わざと売れないような戦略
CX-30の発売当初からMAZDAも説明していたが、意図的にCX-5との価格差を小さく設定したために、CX-30目当てでやってきた新規顧客の少なくない数が、上位モデルのCX-5に流れる仕組みになっていた。国内シェア3割のトヨタと、3%のMAZDAを比較するには、カローラの販売台数の10分の1の数にCX-30、MAZDA3、MX-30の合算が届くかどうかが目安になる。最新の2024年8月はカローラが10,541台(6車種合算)とプリウス5.909台に対して、CX-30単独で1,172台もあるので、決して悪い数字ではない。
価格面でもカローラクロスが219万円〜の設定で、初期モデルからエンジンが変わり2Lの新世代ユニットのダイナミックフォースエンジン(170ps)は、MAZDAの2L自然吸気(156ps)より高出力を実現している。一方で日本市場のCX-30は255万円〜の設定であり、単純にパフォーマンス関連のスペックで比べるとカローラクロス相手には見劣りする内容になっている。それでもトルコンAT装備、インテリアの質感、MAZDAのデザインに惚れ込んだ・・・など様々な理由からCX-30の優位を理解した人が選ぶクルマになっている。