大手2社とMAZDAが強い
好調の要因として考えられるのは、トヨタは北米向けのTNGAシャシーやダイナミックフォースエンジンの投入で基本性能が上がったことと、ハイブリッド車の売上増加が効いている。VWはSUV投入の遅れとディーゼルゲート事件で北米市場でのシェアを大きく失ったが、ロードカーのゴルフやジェッタを高性能モデル中心の設定にする一方で、販売の柱になるSUVでティグアンより少し小さいタオスを投入した効果が出ているようだ。
MAZDAはトヨタ、VWの上位ブランドとなるレクサスやアウディのシェアを奪うCX-90、CX-70、CX-50が好調で、2010年代はCX-5とMAZDA6が1万台ずつで2万台/月くらいの販売だった北米市場において、2024年には4万台/月を突破してしまった。縦置きシャシーの大型SUVがアメリカ市場で狙い通り売れたわけだけども、2019年に最初に発売されたCX-30こそが「プレミアムMAZDA」の幕開け予感させていた。
プレミアムブランドの腐敗
北米市場のCX-30は2.5L自然吸気(191ps)と2.5Lターボ(227ps)が用意されていて、プレミアムな素性を意識した設定になっている。同カテゴリーのプレミアムブランド車だと、メルセデスは既にGLAが北米市場から撤退している。BMWのX1、X2やレクサスUXなどが販売を継続しているが、プレミアムブランドとは言い難い設計の甘い部分が見られる。特に気になるのは、北米の自動車保険向けの衝突安全テストであるIIHSにおいて、X1、X2、UXのいずれもが最高レベルである「トップセーフティピックプラス」に到達していないことだ。
BMWやレクサスにとってはCセグSUVは、より多くの顧客を獲得するための入門車に位置する。同じグループのミニ・クロスオーバーやトヨタC-HRの設計を使ってBMWやレクサス向けに仕立てたモデルだ。拡販を狙って短い開発期間で作られたのかもしれないが、登場から10年余りでIIHSでは一度も最高レベルの評価に到達していない。メルセデス(廃止済み)もアウディも同様にCセグSUVの安全面は全く評価されていない。唯一評価が高いのはボルボくらいだ。