絶望的状況
2000年頃から自動車産業は多国籍グローバル生産が活発になり、2020年頃からBEVシフトへの対応に翻弄されて、肌で「クルマの終焉」を感じるようになった。乗れるうちに乗っておこうという意識が先走っていて、MTのスポーツカーの売れ行きが伸びていたりする。一方でBEV化に忙殺される欧州では、すでにBMW&MINI、フィアット&アバルト、VWがMT車の取り扱いを止めてしまった。
「MT車の天国」だった欧州市場の激変は衝撃だ。VWやフィアットなどのメーカー内製のMT生産は次々と終了する。欧州を拠点とする、カナダのマグナ傘下のゲトラグ(ドイツ)と、ZF(ドイツ)、ダナ=グラッツィアーノ(イタリア)の3つのMTサプライヤーがある。現状ではゲトラグMTの採用はフォード車(ブロンコ、マスタングなど)が中心になっている。ZFはトラックやバス向けで、グラッツィアーノはワンオフのレーシングカー&スーパーカーに搭載される。
日本車のアドバンテージとは!?
マッスルカーとピックアップトラックのアメリカ車、スーパーカーと小型ハッチバックのイタリア車、高級サルーンとGTサルーンのドイツ車という「グラウンド・イメージ」は、そのような特定のイメージを持たない韓国車、中国車のシェアが伸びる中で、「地理的表示(GI)」は、ユーザーのクルマ選びの判断材料となる記号的価値を与える。「舶来」好きな日本の輸入車ユーザーが、韓国車や中国車を買おうとしない理由だと考えられる。
現状の日本車においてもあまり有効な「地理的表示(GI)」は無さそうだけど、その中でもランクル、アルファード、ジムニー、ロードスター、GR86などがアイコニックな存在として人気を得ている。誕生してから35年のロードスターと、23年のアルファードは、それぞれわずか4世代ではあるが、メーカーの情熱によって、その存在価値を高め続けてきた。この2車種の販売が終わってしまったら、もはや日本の自動車産業は、韓国や中国と変わらないものになってしまう。