ホンダの世界制覇
40年前くらいから、ホンダは驚異的な技術革新を武器に急成長を遂げ、アメリカや欧州の多くの自動車メーカーを恐怖のドン底に突き落とした。北米BIG3のうち、クライスラーとフォードはホンダのエンジン技術(CVCC)を認め技術提供を受けた。ポリシーの問題からこれを拒んだGMの経営者は「アコードは自動車産業のルールを変えてしまった・・・」と、その圧倒的な破壊力の前に敗北宣言を出している。さらにイギリスのローバーと提携し、欧州市場でホンダOEMによるローバー車の販売が伸びた。
欧州にやってきた圧倒的な高回転のVテックに対し、BMW、アウディ、アルファロメオは欧州のプライドで、絶対に負けを認めようとせず、9,000rpm級の超高回転スーパーカー・スペックの自然吸気エンジンを相次いで市販車に投入して対抗した。戦時中に飛行機エンジンを作ってきたメーカーにとっては10,000rpmオーバーは余裕で設計可能だけど、厳しいコストとの戦いとなる。不毛なエンジン・スペック競争に疲弊した各陣営は、イラク戦争(2003年)での原油価格の高騰と、その後にやってくるリーマンショックを受け、次々とターボエンジンへドロップアウトした。
北米市場での戦い
ホンダと欧州ブランドによるハイパフォーマンスな「グランドツアラー頂上決戦」は、「エンジン車の楽園」で、尚且つ力強い経済成長に沸くアメリカ市場で現在も続けられている。欧州から北米へと送られる、BMW4シリーズ、アウディA5、アルファロメオ・ジュリアを迎撃するのは、アメリカ人に愛されたホンダが北米工場(オハイオ州メアリーズビル)で生産するアキュラTLXで、2020年からの現行型は、プレミアムカーとして洗練されたデザインになったが、どこかアウディに似てきた。
デザインだけでなく、エンジンも2L・直4ターボ(276ps)と「タイプS」用に新設計の3L・V6ターボ(360ps)が採用されていて、アウディA5(2L・直4ターボ204ps)、アウディS5(3L・V6ターボ367ps)に対応したグレード設定になっている。レジェンドやNSX(2代目)のために開発したが、あまり認知度は上がらなかったホンダの「横置きSH-AWD」の技術力をアウディの縦置きクワトロと比較させることで、北米市場にその存在を知らしめる狙いがあるのだろう。