自動車メーカーが多数あることが、日本の自動車産業の強みであり、セダン、ワゴン、ミニバン、コンパクトハッチバック、スポーツカーが各メーカーから発売され、好みに合ったクルマを選ぶ楽しさが当たり前だった。2009年のリーマンショックによって様相は一変した。MAZDAやスバルが日本専売モデルの廃止を打ち出し、三菱はミニバン、SUV、軽自動車だけにラインナップを限定した。日産、ホンダもこの頃から日本向けラインナップが大幅に縮小された。
2025年現在では、「総合自動車メーカー」としての姿を留めているのはトヨタ自動車だけになった。昭和から平成初期に見られたブランドヒエラルキーでユーザーを囲い込む商法も、団塊世代をターゲットにしたものであり、この世代が後期高齢者に突入している現在では、トヨタを含めた各メーカーの戦略から外れている。トヨタもヒエラルキー戦略からの撤退で車種の統廃合が進んでいるが、傘下に抱える車種数は国内メーカーでは圧倒的に多く、まだまだ多くのプラットフォームに分かれて開発が行われている。
日本メーカー伝統のヒエラルキーを残すトヨタ車は、ユーザーにとっては車格を意識しやすく、新車価格や中古車価格で多少高額であっても納得して買いやすいという効果がある。一方でホンダ・アコード、MAZDA・CX-60、日産アリア、スカイラインなどの高級モデルは、ボデーサイズや燃費の悪さなどそれぞれに難点があり、購入希望者が限定される上、車格もわかりづらいので中古車価格で苦戦している。
あらゆるレンジのクルマに開発費をかけて作っているトヨタだからこそ、ヒラルキーの差別化で高額な上位モデルには良い部品がたくさん使われているだろうし、高級車を単発的に作る他社は、営利企業ゆえのコストダウンが行われるイメージもある。実際は逆でトヨタこそがコストダウンの鬼だとしても、多くのユーザーはディーラーで実際に下位モデルと比較することで納得できてしまう点も大きい。トヨタのプラットフォームをベースに現行モデルを昭和・平成初期の価値観で、その車格を比較してみたいと思う。