BMWの系譜
乗用車モデルが1〜8シリーズ、SUVがX1〜7とタイトに並んでいるけど、そのラインナップの中でも日本市場ではなんとかトップシェアをキープしている3シリーズがいよいよ新型になったので、このクソブログに3シリーズについての存念を残しておこうと思います。「隙間があれば埋める」はビーエムの昔からのやり方のようで、1950年代に戦後モータリゼーションの一角として、「小型コミューター」とクヴァント家クラスの欧州貴族が乗る「高級車」を主に作っていたのだけど、日本と同じくらいのタイミングで「大衆消費社会」がやってきた西ドイツで、1962年にミドルクラスに革命(ノイエクラッセ)を起こすべく投入されたのが「2002」というモデル。かっこいいな。
時代を作る
1975年に「2002」の後継モデルとして、初代3シリーズ(E21系)が発売された。以後は2世代ごとに1つのプラットフォームというポルシェ911みたいなモデルサイクルを辿ってきましたが、今回の新型は44年目の7代目に突入しました。素晴らしい!! 1・2世代はまだまだセミトレーリングアームを使っていて、もっぱらエンジン性能の高さで人気を得ていたらしい。2世代(E30系)は「池袋ウエストゲートパーク」というメチャクチャ痛いドラマに出てきたアレです。「六本木カローラ」がバブルの東京でどんな景色を作っていたのか全くわからないですけど、この2代目こそが歴代3シリーズで最も普遍的なデザインをまとっているのではないかと思う。MINI、フィアット、VWのように、BMWはこのデザインを「復刻」しても良さそうだけど、最先端のイメージリーダーが宿命づけられているプレミアムブランドではなかなか難しいのかもしれない。
メルセデスを跳ね返す
王者メルセデスが80年代に「マルチリンク」革命とともに、世界初の装備車Cクラスを投入してビーエム3シリーズを叩こうとしたけど、王者の本気の突撃を見事に跳ね返しE30系は市場を死守したんだって・・・おー!!すげーぞー!!。1990年からシャシーが変わって3代目(E36系)からは3シリーズも「マルチリンク」を装備で気合十分なのだけど、当時の日本メーカーの勢いはドイツメーカーを圧倒しての黄金期なわけで、わざわざBMWを買わなくても280psのターボユニットを積んだモデルが各メーカーから発売されていたのだから相当な逆風が予想されるけども、その中でそこそこ存在感を発揮したのは素晴らしい。それにしても「ネーミング」って大事だなー。ビーエムってかっこいいもん。
アンダークラスヒーロー
90年代半ば。バブルが崩壊し、流行語が「リストラ」だったりした時代、まだ私自身は免許が取れない年代でしたけど、なんだか日本を直視するのがちょっと辛い時期だったかもしれない。今では考えられないことだけど、日本の音楽アーティストよりもイギリスのロックバンドの方が人気があったという不思議な時代。バブル絶頂の89年頃までの日本のエンターティメントは非常に知性があったと思う。チャゲ&アスカが手がけた光GENJIの最初の方の楽曲とか、今も頭に鮮明に残ってたりする。だけど1990年代の後半になると、記憶が完全にレディオヘッドとアンダーワールドになっちゃう。そしてそんなUKシーンを牽引したオアシスの名曲「スーパーソニック」のリリックには・・・BMWが登場。そこの部分にはどう考えても「メルセデス」は入らない。欧州のBMWはいつの時代も「アンダークラスヒーロー」だった・・・。
名車E46
説明不要な4代目(E46系)は、奇跡的に独、日、伊、仏、英のG7な自動車先進国が同じフィールドで戦うスポーツセダン市場を切り開いた。自動車業界の「OASIS」だなー・・・E46の大ヒットにシンクロして色々な自動車メーカーからDセグスポーツセダンが登場。ドイツからはE46の他にアウディA4。イタリアからはアルファロメオ156/159。フランス代表はプジョー406/407。イギリス代表は・・・ローバー80(ホンダ・アコード)、ジャガーXタイプ(MAZDA6)。そして日本代表はトヨタアルテッツァとMAZDAアテンザ。これだけ参入してくれば過当競争でヤバそうだけど、それでもリーマンショックくらいまでは上昇傾向にあり、どこも儲かっていたらしい。
突然の幕引き
5代目(E90系)はV8自然吸気で8250rpmピークという今のBMWには考えられないユニットを搭載したM3がすごかった。HONDA、AUDI、ALFAROMEO、BMWがフェラーリやランボルギーニみたいなエンジンを競って作る時代で、今の白けきった状況を考えれば、二度と現れない「伝説」だった。上位モデルの5シリーズは同じくらい高回転のV10、同時期に開発されていた幻の二代目NSXもこれに対抗していた時代がほんの10年前だったんだよなー。
フラストレーション
10年前の熱狂的だったBMWに比べれば、2010年代以降のBMWは物足りない。そりゃ一時的にファンが離れるのも仕方のないことかもしれない。自動車雑誌のオッサンライターがやたらと暴れるのもまあ無理もないことだ。最近も某自動車雑誌の座談レビューで、某日本メーカーが新しく発売したDセグセダンを、まるで何かに取り憑かれたかのようにボロクソに叩いていた。エコ性能をベースに商品力を構築する今時のスポーツセダンは全部気に入らない!!ってスタンスなんだろうけど、あそこまでメチャクチャに書くもんだろうか。よほどの急発進じゃない限りは「動き出すとすぐにエンジンがかかる」ってことはないモデルなんだけど、ヒュンダイ?のサルーンと間違えてないか!?(どーでもいいけど)
ユーザーをナメるな
2代目、4代目と偶数世代で歴史的なモデルを出してきたBMWですが、6代目となるF30系は日本でもアメリカでもCクラスに完敗する初めての3シリーズになってしまった。ご先祖様に顔向けできずにリアイアして行きましたが、これはこれで良かったんじゃないかと思います。華々しく海外生産を始めた5代目E90と6代目F30に使われているシャシーは、中国や南アフリカの工場で生産するのに良い「生産効率」ベースで設計されていて、明らかの他のメーカーの同クラスを追いかけるのは無理があった。同じシャシーを使う1シリーズもCセグ同士の比較で競争力がなかった。E90/F30は、上級モデルとなった5シリーズのE60/F10のマーケットを脅かさないように意図的に手を抜いて作っていた・・・と考えるしかない。
ポンコツに負ける屈辱
2010年代に入りBMWブランドからFF車が発売されるようになった。あまり大きな声では言えないけど、E90/F30よりもハンドリングがスッキリしていて乗り味が良い。2シリーズアクティブツアラーなんて見た目以上に素直でいいハンドリングだ。5シリーズを超えないように抑えて作った結果、下のクラスのモデルに負けてしまうという事態に。そりゃCクラスにボコボコにされるのも無理ないって・・・。決してCクラスも褒められた出来ではない。最近のメルセデスはAクラスからEクラスまでロードノイズが盛大に入ってくるし、エンジンの音がとにかく悪い。乗り心地(ショックの少なさ)などF30非Mスポの方がいいくらいなのに不思議だ。
プライドを持て!!
いや全然不思議じゃない。ショックの少なさやミッションの滑らかさを求めるならレクサスやMAZDAの方が完全に上な訳で、Cクラスはそことガチンコせずに、気の利いた内装と、スポーティに振った乗り味でドイツ車として求められているスタンスを守った。その結果、F30は非常に中途半端な存在になったと思う。ディーゼル車でゆったり走る連中は群がったけど、328i/330iのニーズは全くなかったし、このタイミングでクーペを切り離して4シリーズを作った。そんなことやってればそりゃファンは逃げ出すだろーよ(何を買っていいのかわかんないし)。「アンダークラスヒーロー」としてのクールさなどもはや無く、ただのドイツ版ト●タに過ぎない。プ●ウスに全く勝てないプ●ミオみたいなもんだよ・・・。(次回に続く)
「BMWをバカにしてはいけない!! F10系528i初期モデル『最後の傑作』」
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