トヨタの走りを変えた2台
サイオンFR-Sは北米市場で好調に売れ行きを伸ばした。米誌「MOTOR TREND」の認定する格付けにおいて、すべてのトヨタ系ブランドの中でサイオンの「FR-S」と2015年に登場した「iA」の2車種だけが最高評価の星5つを獲得した。「iA」はMAZDAのディーゼルを搭載する契約を反故にしたトヨタが代わりに締結したOEM車と言われていて、メキシコのMAZDA工場から出荷されるデミオをベースとしたBセグセダンだ。
2016年にサイオンが終焉すると、この2車種は北米のトヨタブランドに編入され「86」と「ヤリスiA」として販売された。トランプによって2020年に発動されたメキシコとの自動車協定により、メキシコ工場からの供給が難しくなったため「ヤリスiA」は廃止になったが、スバルとMAZDAのOEM車の走りの質が、他のトヨタ車よりも圧倒的に高いことを見抜く北米カーメディアは素晴らしい。
ヤリスとMAZDA2の関係
厳しい環境規制が敷かれる欧州市場では、C02排出枠を確保するために、MAZDA2のHEVがトヨタのフランス工場からのOEMで賄われている。一方で南米諸国ではMAZDAのメキシコ工場から2L自然吸気エンジンを搭載したMAZDA2やOEM版ヤリスが販売されている。2017年からのトヨタとMAZDAの包括的アライアンスによって、ヤリスとMAZDA2のグローバルでの補完体制が敷かれている。
GR86やロードスターと同じく、欧州や日本で根強い需要がある「MTのBセグ」も、同じように「クラシカルスタイル・カー」として支持されている面は否定できない。日本や欧州では中型以上のクルマはことごとく高級感を売りにするようになった。高性能スポーツカーも内装の質感がどんどん上がっている。資本主義の終焉が囁かれる時代に、自動車業界の価値観はいまだに20世紀のままだ。