日本市場のジレンマ
自動車所有コストが極大化する中で、メーカーが利益優先でクルマを作れば、自動車の市場は縮んでいく。高齢化と人口減少に直面する日本市場特有の問題ではなく、あらゆる意味で日本の対極に位置するインド市場でも、四輪車は経済的にサスティナブルな存在ではないと見做されつつある。GDP拡大にふさわしい高級化が受容されるどころか、インド生産の「素」のモデルであるWR-Vやフロンクスが日本に逆輸入されている。
高度経済成長期以降の日本市場はあらゆる商品やサービスが「高級化」を競ってきた。お手本はアメリカで、当初は「大量消費」で経済を成長させ、オイルショック後は「高級化」によって売り上げを確保した。質実剛健な欧州メーカーも日本やアメリカには、小さいエンジンにMTを組み合わせた「素」のモデルの導入はしなくなった。BMWの3シリーズや5シリーズには直3エンジンの廉価版があるが、日本市場向けは停止されている。
ビジネスモデルの転換
バブル期以降のMAZDAは、海外市場をビジネスの中心に据えてきた。10年くらい前までは、日本、中国、北米よりも断然に欧州市場が中心だった。NDロードスター・NR-Aやデミオ15MBは欧州向けのハイオク規格の商品をそのまま日本市場で販売したものだ。存在こそ地味ではあるが、日本市場のコアなクルマ好きの関心をMAZDAに向ける戦略モデルとして機能してきた。
CX-5、CX-50、CX-90が主導した北米市場での拡大によって、今では主力市場が北米となった。北米依存率が8割を超える「アメリカブランド」であるスバルは、日本市場での価格上昇が批判されているが、MAZDAも同じような状況になりつつある。NR-Aが姿を消し、15MBもいつ販売が終了しても不思議ではない状況だ。2026年の欧州市場の規制強化が迫る中で、MAZDAはどんな決断をするだろう。