トヨタとの違い
トヨタもヤリスと86の投入以降は、欧州市場向けの「素」のモデルを日本市場のラインナップに加えて好感度をあげてきた。しかしMAZDAとは違って巨大メーカーのトヨタでは、欧州向けヤリスはフランス工場での生産であり、岩手工場生産のレギュラーガソリン対応の1.5L自然吸気モデルにMTを組み合わせて、169万円〜の良心的価格で提供している。このMTのヤリスの1台あるだけで、トヨタのブランドイメージは個人的にはかなり良いものになった。
ヤリスのライバルであるフィットでは現行モデルにMT設定がない。フィットはホンダの主戦場である北米では販売されておらず、日本や欧州での戦略モデルだ。先代までは欧州市場向けVテック&MTのグレードが、日本の工場でも生産されていたが、現行では欧州右ハンドル市場の英国で、全車e:HEV化が完了していることもあって、日本でもMTがなくなってしまった。このヤリスとフィットの対比が、日本市場でのトヨタとホンダの明暗を分けている。
選ばれるクルマとは!?
日本市場でのMT販売比率はわずか1%と言われている。営業車、レンタカー、カーシェアを含んだ数字なので、個人ユーザーが趣味のために選ぶクルマに限定すれば、もう少し高い割合になる。自動車の高額化で所有のハードルが上がっているが、「効用」を重視して消費を行うユーザーが増える中で、MT設定はかなり有利に働く。特に複数台所有を決断するユーザーの背中を押している。
レンタカーやカーシェアで乗れるクルマをわざわざ買う気はしない。MAZDA3やMAZDA2もタイムスカーシェアで用意されるが、MT車はほとんど配備されていない。トヨタはヤリスやプリウスでカーシェア用と個人所有向けでエンジンスペックを変えていて、買う人々にアピールしている。「品川」「世田谷」ナンバーのBMW、メルセデス、MINIなど輸入車「わ」ナンバーも奥多摩周遊道路でよく見かける。ロードスター、スイスポ、シビックRSなど「買う理由」があるクルマの販売は底堅い。