ドイツメーカーはお手上げ!?
メルセデスやBMWといった名門ブランドは、日本車より先に世界のスタンダードになり、「走り」の個性でクルマの価値を担保してきた。涼しいドイツの気候を考えればエアコン・レスでもいいくらいなのだけど、21世紀になって急激に蒸し暑いアジア市場が活性化したために、さまざまな快適装備が次々と「高級車スタンダード」に取り入れられていった。結果的に電装品、マテリアルからホイール、タイヤに至るまで東アジアのサプライヤーだらけで、コストがそちらに多く使われてしまえばエンジン開発などにお金が回らない。
快適装備から安全装備まで全部載せて、メーカーが200万台くらいの規模を達成できる価格で売るには、「走り」にコストをかけてきた縦置きFRシャシーでは難しくなってきた。アジア市場のリコール対策費まで勘案すると価格が跳ね上がるのは避けられない。それならばM&Aで手に入れたアジアメーカーの横置きシャシーを使った方が都合がいい。アジアの過酷な気候でも実績十分であるし。今では日本市場におけるメルセデス&BMWの販売の主体は横置きモデルにシフトしている。
ブランドイメージの十字架
横置きシャシーに快適装備を詰め込んでみたものの、アジア市場で対峙するのは、半世紀も横置きで頑張ってきた三菱、MAZDA、ホンダである。この3陣営がそれぞれに設計した横置きシャシーが、メルセデス、BMW、フォード、ボルボ、ヒュンダイ&キアなどで採用され、すっかり世界のスタンダードになっている。三菱、MAZDA、ホンダにしても「走り」の個性が求められていることには変わりはなく、日本車全体の「快適性スペック向上」の平均値が高まるにつれて、売り方に悩む場面が増えてきた。
「走り」も「快適性」どちらも文句なしの高水準であるはずのホンダ車(アコード、インサイト、シビックなど)が、価格という唯一の欠点で思ったほど売れない。内容を考えれば「安い」のはよくわかっているのだけど、「走り」と「快適性」がどちらも担保されてそこそこの価格がするホンダ車を、どう使って良いかいまいちピンとこない。北米ホンダのコスパ志向とは違い、日本ではs:HEV主体の「気軽に乗れないホンダ車」が多く、いくらクルマが良くても局面の好転は予想しにくい。