得意分野だけで勝負する
ちょっと認め難いところもあるが、「快適性スペック基準」でクルマ選びをされてしまうと、レクサスのクルマ作りがあらゆるパラメータで優位に立つ。運転中も、駐車場に停めても、ディーラーでサービスを受けても「常に快適」という意味では、ベントレーやマセラティといった雲上ブランドを除けばどこにも負けない。誰もレクサスにダイレクトなステアリングや、スーパースポーツ並みの加速なんて求めていない。
レクサスがBEVに完全以降するその日まで、V8自然吸気がフラッグシップのユニットとして残り続けるのだろう。単純な加速だけだったら、プリウスの新型ユニットや、PHEVユニットの方が早いが、価格帯がまるで違うので、比較対象にされない。ユーザーに「レクサスだから早くて当たり前だ」・・・とは絶対に思わせないようにブランディングし、得意な「快適性スペック」だけでの評価に持ち込んでいる。これはマーケティングセンスの塊だ。
脱・日本車の戦略
どっかの自動車ライターが、毎年の単行本で必ず「軽さは正義」と書いている。「走り」の質感を楽しむなら断然に軽量モデルが優れているという意味で、ロードスター、スイスポ、アバルト595などの商品価値はその部分に大きく依存している。これらの熱狂的ユーザーに支えられたモデルは、むやみに顧客を増やすために「快適性スペック」の標準化にコストをかける必要もない。
それに対してレクサスの全モデルは、いずれも「軽量」ではない。走りの質など追いかける術がない・・・は語弊があるかもしれない。車体剛性を高め、エンジンスペックに余裕を持たせることクルマの価値を表現しようとしている。アメリカ市場における従来の「小型&軽量」という日本車のイメージをブランド全体で払拭する。アメリカ車に負けないようなタフでパワフルなクルマを志向している。