集大成!?
タフな状況を戦い抜いてきた百戦錬磨のトヨタ開発陣が、「プリウス=タクシー専用」だと決断しようとした社長を押し留めた・・・という構図が、トヨタは公式から感じられる。ワンマンに見える社長を、社員が自分の出世をも顧みずに全力で止める。そんなエピソードを嬉しそうに話しながら発表会見を始めた社長の意図はトヨタのステークホルダーに向けて「優秀な社員」のPRなのかもしれない。これだけの大企業のトップだから「孤独」を感じるだろうし、完成した新型プリウスの出来栄えに満足だったのだろう。
社長自らが2017年頃に「先代プリウス(4代目)はカッコ悪かった」と言っている。そのせいもあってAJAJライターも躊躇なく「先代はカッコ悪かったけど、新型はかなりカッコ良くなった!!」と平気で言ってのける。ウィキペディアにもハッキリ名前がクレジットされている先代プリウスのデザイナー児玉修作さんがちょっと不憫だ。決して悪いデザインではないけども、コンサバ志向&思考なトヨタのラインナップに入ると確かに浮いてしまう。
先代が売れなかった理由
先先代に当たる3代目プリウスは、日本でのSUVブーム前夜の2010年に国内だけで30万台を売り上げている。月に2〜3万台供給されていた大ヒット車の後継車を作るなんてシンドイ仕事だろう。THSが他のトヨタ車にも普及していて、さらにSUVブームの直撃を受けたこともあって、先代プリウス(4代目)は発売のタイミングが非常に悪く失速した。この4代目の不調で大幅に減らされた生産体制は急には元に戻らず、現在の新型プリウスの長期化しつつある納期に影響していると思われる。
3代目プリウスの圧勝を見て、某国内メーカーがトヨタにTHSの供給を要請し、2013年から一時的にではあるが他のメーカーからTHS搭載モデルが販売された。そのメーカーは2010年頃はリーマンショックと国内市場の低迷を受けて赤字転落しており、株価の低迷も止まらずに倒産間近とまで言われていた。企業としての最終局面で、考えられるあらゆる起死回生の奇策を繰り出し、欧州市場向けのディーゼルを日本市場に持ち込んだり、あまり実績がないSUVの開発に全力で取り組んだりした。