THS改良事件
さらに保険をかけてカローラサイズの中核モデルにTHSを搭載した。しかし3代目プリウスの回生ブレーキシステムがあまりにも非常識なフィールだったことにブチ切れた開発陣が、ライセンスで許可されている範囲での改造を敢行し、3代目プリウスとは全く異次元のブレーキフィールを実現した。「フィール」なんていう個人の主観に基づくものに本来は優劣なんてないのだけど、この改造THSに衝撃を受けたのがトヨタの開発陣で、2014年に予定されていた4代目プリウスは1年延期された。
これが全ての不幸の始まりだったのかもしれない。改造THSをドヤ顔で販売した供給先メーカーでは、全く話にならないほどTHS搭載モデルは売れなかった。このメーカーは高速道路巡航を売りにしたロングツーリングモデルで定評を得ていたのだから、高速燃費が悪化するTHSとの相性は最悪だったと言っていい。また発売を1年延期してブレーキを改良して登場した4代目プリウスも、他社の技術を投入したプライドの無さが嫌われたのか・・・もしくはデザインか・・・これまた売れず。
混ざってはいけないもの
AJAJの国沢さんも初代から3代目までは全て所有したけど、4代目は買わなかったらしい。どんなにクルマ好きから批判されようが唯我独尊なトヨタこそが至高な存在であり、それが社長の意向で方針が変わり他社の影響を受けることになって気持ちが離れたのかもしれない。2023年中盤での退任を発表している豊田章男社長は新型プリウスの反響が大きくて安心しただろうけど、このままだと「プリウスをメチャクチャにした社長」という評価もあったかもしれない。
2017年には豊田章男社長の肝入りで、改造THSのメーカーとのアライアンスが発表された。北米に合弁工場を建設し、トランプ大統領が巻き起こした北米からの日本メーカー批判に両社は協力して対応してはいる。しかしTHS の一件で両社の共同開発は国内市場においてはお互いに何のメリットも生み出さないことが判明したようで、海外市場でこそいくつかOEMが存在するものの、国内向けはサプライヤーレベルでの協力に留まっている。