良いクルマでも売れない事態に・・・
私が断言するのも変な話だけど、前述のように日本のSUV市場は大きくザックリ2つに分断されている。ホンダ以外の全ての日本メーカーは、「次のSUVはどっちで行くのか?」が開発の最初の段階で決めているはずだ。2012年以降に発売されたSUVの中で伸び悩んだのが、2013年ハリアー(カローラシャシー)、2015年CX-3(小型なのにディーゼル専用)、2016年CR-V(ハイソカーじゃないデザイン)、2019年CX-30(ハミ出す)の日本車SUV4台で、他にも全く泣かず飛ばずな輸入車SUV全般をも教訓にすれば、SUVの2つのトレンドに逆らうのは難しい。
販売こそイマイチだったけど、販売が振るわなかった日本車4台はそれぞれに力作であり、同時期の他のモデルよりも「良い点」が多かったりする。いずれも個性的で魅力に溢れた素晴らしいクルマだ。当然ながら琴線に触れて気に入っているオーナー様も少なくないだろう。たまたまトレンドに乗れなかっただけだし、そういうモデルこそとても愛せる(GHアテンザなど)。同じように、トヨタが社長の号令一下で、目一杯に頑張って作り込んだため、発売時には大ヒットとなったC-HRやRAV4も、SUVの「ハイソカー・トレンド」が鮮明になるに従って販売が激減している。
他がやらないクルマを作る意義
リーマンショックで苦境に追い込まれたM社が、がむしゃらに開発した結果、楽しくて自由なはずのSUV市場が、いつの間にか「ガチガチのマナー」を求められる場所に変わってしまった。乗り出しで400万円かそれ以上するようになったミドルSUVは、何よりも周囲を不快にさせない「清潔感あるデザイン」や「静粛性と上質な乗り味」が開発上不可欠だ。1980年代90年代の悪名高き「オッサン中心の日本社会」を連想させてしまうセダンに「ハイソカー」が回帰することはないだろうから、SUV開発では今後もこのトレンドが続くだろう。
そんなを窮屈な環境をZR-Vで「ぶっ壊してやる」という、ホンダの反骨心が、少なからずクルマ好きには好意的に伝わっている。「静粛性なんてクソくらえ!!」ってことはないだろうけど、無理やり吸音して無音空間を作ろうとはしていない。SUVとしては比較的に車重が抑えられ、平均よりも強力なユニットを積んでいるから速いし、「ハイソカー」では重要ではないハンドリングが肝だ。他のブランドも同様のクルマを構想しただろうけど、実際に作って走らせれば「飛ぶ」。ブッ飛んでないと「SUVの解放」は難しいだろうが・・・。