大分断
ホンダのヤバい遺伝子が色濃く発揮されているらしい新型SUV「ZR-V」が今年発売される。M社が先導し、レクサス、トヨタ、日産、スバル、三菱など主要メーカーでは、「日本向けミドルSUV=ハイソカー」の空気感が共有され始めたのに、「空気読めない」ホンダらしい登場の仕方だ。SUVなんて誰もまともに試乗なんてしない(してもあまり意味はない)・・・と前述したが、とりあえずZR-Vはそんな風潮を変えてしまいそうだ。
この10年でSUV市場も成熟し、各モデルもだいぶ「棲み分け」が進んだ。C○-5、ハリアー、エクストレイル、アウトランダー、フォレスター、レクサスNX、RXが「ハイソカー」路線がセダン市場を食い尽くした。一方でヴェゼル、ライズ、ヤリスクロス、キックス、ハスラー、クロスビー、タフトなどの、小回りが利いて凸凹の路面でも入っていけて、日本の道で幅広く使える「交通インフラ&アドベンチャー」路線の販売はコンパクトカーを凌駕している。この2大勢力には逆らえない。
選ぶ側の単純な心理
小さいSUVの方が運転していても楽しいし、どこを走るにも苦労しないのは間違いない。しかしサイズから狭い道が苦手そうな「ハイソカー」を、運転技術によってカバーして、狭いところでもグイグイ進めるとカッコいい・・・ってのはあるかもしれない。「擦りたくない人」と「カッコつけたい人」が2大勢力となったSUVのユーザーに取り込まれていく。SUVの中にも「カローラ」気分で気軽に乗れるモデルと「クラウン」気分で優越感を感じるモデルの大雑把に2種類あるってことだ。
「ZR-V」は、やや「ハイソカー」寄りなのだろうけど、やはり両陣営の中間に位置するややボヤけたモデルだ。似たような立ち位置のクルマにCX-30がある。CX-30の登場時は注目度も高く、やがてはブランド内でのトップセールスを期待する向きもあったようだけど、どっかのメーカーが定義してしまった「SUVマナー(区分)」の影響で、なかなかコアなターゲット層が見つけられずにやや地味に燻っている。とても良いところがたくさんあるクルマだけど、なぜか買ってもらえないことは日本市場ではよくあるらしいが・・・。