情熱の果てに
現行4シリーズの特大グリルは、いよいよE39系の亡霊を振り払うべく、極限まで過激さを意図的に追求した結果としか思えない。日本市場で定点観測すれば、BMWは完全に迷走しているのに対して、MAZDAは着実にデザインを洗練させていて高い評価を受けている。だから「マツダがBMWを越える」という切り取りも可能だろう。しかし現実のBMWのブランド戦略は、他社デザインなど全く関係なく、自身のブランドの重みや過去の名車への評価と戦い続ける過酷な荊の道から逃れられない。
MAZDAのデザインは確かにわかりやすい。カナダやオーストラリアでも大絶賛されていてグローバルで通用する普遍的デザインである。もっとアグレッシブなデザインを好むなら、グリルが盛大に開いたアウディや、デカ過ぎるエンブレムを掲げるメルセデスが合っているかもしれない。しかしこれらの守りに入ったデザインとは真逆で、全てのアイコンを忘却するかのごとくサプライズを繰り返すBMWデザインには、もはや次はどうなるのか?のワクワク感しかない。
予期せぬ展開
最高のグランドツーリングが楽しめるクルマを、ちょっと無理すれば買えるくらいの価格で販売し続けてくれれば、生涯ずっとBMWに乗り続けたいという人も少なくないと思う。しかしBMWがそれを良しとはしていないのが厄介だ。今後の数年で大きな変化が起きそうな輸入ブランドは、中古車価格が大きく低迷する。ボルボ、アウディ、ジャガーなどBEV化に進むブランドのエンジン乗用車だと下取りが全く期待できないので、新車価格の高騰にユーザーは手を出せなくなる。
タイ、マレーシア、インド、オーストラリアなどの右ハンドル市場が、日本からのエンジンの中古車を多く求めるようになれば、低迷が続くBMW3シリーズの中古相場にも良い変化がありそうだが、現状では新車を率先して買える状況ではない。駆け抜ける喜びの理念はいつまでも変わらないと信じたいが、BMWが現在力を入れているのは、高級車市場におけるBEVの拡販にあるようで、とうとう欧州市場ではVWやテスラを抜いてBEV販売台数No.1のブランドになっている。