見た瞬間にそのクルマの「使い方が次々と浮かんでくる」そんなハッピーなモデルがいつの時代でも一定割合は存在します。そんな『オーラ』を頼りにクルマ選びをすると・・・後で後悔することもあるかもしれないですが、何よりドキドキ感があることが大事ですね。メチャクチャに古いクルマだったり、やたらと排気量が大きかったり、サイズが大きかったり、あとはソフトトップでも無い限りは大丈夫だと思うのですけどね。
リーズナブルな価格設定で、小型車なのに・・・使い方が明確で、どこにでも乗っていけそうなデザインの「イケてる」クルマがこれからの普通車マーケットの王道になるんじゃないかと思います。その中ですでに圧倒的な強さなのが、トヨタが誇るプリウス、アクア、シエンタ、フィールダーの「4大ベストバリュー・スモールカー」ですが、この陣容ならばどこの海外モデルと対峙してもそう簡単には負けないでしょうね。
クルマ好きの中には、プリウス・アクア・シエンタ・フィールダーはどれも全然興味ないです!っていう人も居るでしょうけども、これ海外に持っていったら間違いなく売れますよ。トヨタ版「クール・ジャパン」ってヤツです。単なる移動の道具としてのクルマならば軽自動車を選べばいいわけですが、実際には多くのユーザーがこの4台のパッケージにとても納得していて、平均して250万円もしくはそれ以上の代金を支払っています。
さてそんなトヨタが強過ぎて、寡占的としか表現出来ない日本市場で勇敢に戦うトヨタ以外のブランドはどうしたらいいの? まずは『250万円』前後の設定で、ユーザーをガッツリ吸い寄せるバキューム力を持った魅惑のモデルを作る以外にとりあえずは生き残る道はないようです。トヨタの対抗馬である日産は真っ正面から勝負せずに、日本市場はとりあえず軽自動車だ!と安易に逃げたところで提携先の思わぬ不祥事に巻き込まれて踏んだり蹴ったりです。今のところはトヨタ『4大ベストバリュースモールカー』に挑むチャレンジャーとして、結果を出しているのはホンダ・ヴェゼルとマツダCX3くらいでしょうか。
輸入車では知名度(ブランド力)が高いVWゴルフですが、249万円まで一気に値下げを行って、トヨタ勢に対して価格面とブランド力での競合を目論んでいます。「走りに関してはいくらかアドバンテージがあるはず!」とメーカー、インポーター、カーメディアは判断するでしょうが、とことん運転が下手くそな日本のユーザーには「走り」という項目のバロメーターはあったとしても、それはまるっきり当てになりません。低速トルクがちょっと太めというだけで「パワフル」と判じちゃうような、つま先でおそるおそるアクセルをこじるだけの『チキン・ドライバー』ばっかりですからねー。特にドイツ車がいい!とか言っちゃってる輩は・・・。
さて前置きが長ーくなりましたが、本稿の主人公はシトロエンDS3です。シトロエンとは分離して「DS」というPSAグループを代表するプレミアムブランドではあるんですが、未だにシトロエン付けないと、何も知らない相手の頭には任天堂の携帯ゲーム機が思い浮かんでしまうくらいに、日本では知られていないです。シトロエンだって知っている人が少ないですけど、とりあえずは輸入ブランドのクルマということはわかります。そんなシトロエンDSの中でボトムグレードながらも日本では堂々とブランドイメージを担っているのが、このDS3です。
日本人の感性にもスッと入って来るクールで清潔感溢れるエクステリア。ほぼ全てのドイツ車で決定的に欠如している360度あらゆる角度から見られることに耐えるクオリティが素晴らしいですね、これぞフランス車の傑作といっていいのでは(イタリア車やイギリス車も360度万能型が多いですけど、ドイツ勢とボルボ(スウェーデン)は『死角』がある)。側面ドア後部のBピラーがデザインの骨子になっていて、そこから『アクティビティへの誘い』やら『日常からの超越』といったブランドイメージが沸き出しています。トヨタのBVSCではシエンタがこれと同じ方向のデザインを志向しているようですが、DS3の方が全体的に整っているだけ上品に見えます(つまりシエンタは取っ散らかっている)。
ヴェゼルやCX3と比べるとどうか?DS3の前ではこの2台もまだまだデザインが保守的な部類になりますね。3ドア(DS3)と5ドアの違いといったらそれまでなんですけども。内装は3台ともに甲乙付け難いくらいで、2メーカーともにかなり必死になってます。しかしそもそもトヨタBVSCが、なかなか飽きさせないインテリアの充実と、使い勝手の良さと耐久性に優れてますから、全体的にレベルは高いですね。これに対してVW(ゴルフ、ポロ)やルノー(メガーヌ、ルーテシア)などは、だいぶ粗野な印象すら受けます。もちろんこういった古めかしい内装が好きという人も一定割合はいるでしょうけど。
厳しい事を言ってしまうと、日本市場においてDSブランドで唯一競争力を持ち得ているのがDS3だと思います。高齢者や女性や運転下手くそなオッサンにも安心して乗ってもらうために、2ペダル車はDCTを止めて日本メーカーのトルコンATを採用してきました。これで坂道発進も怖くない!!・・・で果たしてこのモデルが再び注目されることはあるのでしょうか・・・今年のフェイスリフトでちょっと奇抜になってしまったかも!!!