専門家の書いたビジネス本にも「ルノーにとって日産はプロフィットセンタだ!」とか書かれてましたけども、日本自動車産業を代表する技術屋・日産を傘下に収めたルノーは、日産を馬車馬のように働かせています(ちょっとモメていて調停があったとか)。日産には目一杯稼がせておいて(それでも利益率5.2%程度だけど)、本体のルノーブランドはというと欧州で黒字化もギリギリのラインなんだとか。国営企業としての側面も持つルノーですから、従業員は半公務員、つまり「親方トリコロール」・・・やっぱり官営ってのはダメなんですかね? ちょっと不思議なのはカルロス=ゴーンのような優秀なコストカッターがゴロゴロいそうなイメージがあるのに、なんでしっかりと儲けられないんだろ?フランスの労働組合は超強力だから?
日産の従業員がバサバサとリストラできるけど、ルノーの従業員は権利で守られているからとかいう「社会権」の適用範囲の違いなんてのがあるんだろうなー。とにかくフランスメーカーが21世紀にも力強く生き残るため、あるいはフランスのGDPを守るため、それから世界の自動車産業で主導権を獲っていくため、という意味では、大きなリスクが伴ったとはいえ日産を傘下に収めたことは大成功だったと思います。ただし日本からみればやりたい放題に見えますから、当然に反発もあって、日本では経営面で親会社のルノーに対するネガティブな感情を表現する人もいます。ルノー(ゴーン)に切られた人が恨みつらみを述べている!?
日本のクルマ好きってのは、その辺の事情(M&Aについて)にはあまり首を突っ込むこともなく、ルノーの新型モデルはいいね!と絶賛していたり・・・。能天気だなー。でもルノー車が日本市場において他とはひと味違う個性的なラインナップで、ファンを着実に増やしているのは確かですね。「いいクルマを作るブランドは積極的に応援しよう!」これこそがバブル期以前から続く、日本のクルマ好きが持つ美徳・義侠心なのかもしれません。10年ちょっと前にはアルファロメオが高品質だ!と広まりちょっと過剰気味なほどに支持を受けましたけど、今となってみると「あの時代」はとっても良かったな!と思います。今でも若者が赤い147を楽しそうに走らせているのを見て、日本の中古車市場もまだまだ捨てたもんじゃないな〜・・・そしてなんだかこみ上げてくるものがあります。そしてアルファに起こったことが今度はルノーに起き始めているんじゃないかなー?
スーパーカリスマライターの小沢コージさんが2005年頃の著書で、当時のルノージャポンのアラン・レーマン社長による日本の心を掴む地道なブランディングをことさら高く評価してました(さすがオザーさんだ!)。日産に出向して日本を学んだ非常にナイスなカーガイが長いスパンでのルノーの地に足の付いた成長を歩んでいると!!10年前の段階ですでにこれほどの評価を受けているわけですし、日産という確固たる足場があって、日本向けのクルマ作りすらも熟知して、技術も手中にしている!という意味では、もはやドイツ勢をも上回る日本市場への『コミット力』を持っていると言えるのでは?
日本ではまだまだメルセデスのブランド力は圧倒的ですし、BMWやアウディの知名度も高く、これらドイツ勢に比べればまだまだ「?」なのが現在のルノーの立ち位置です。10年進歩してもまだまだドイツ勢の背中が見えないの?って言われちゃいそうですが、日本市場を分析してどれくらいの価格帯が日本で求められているのか?とか日本人が好むデザインとは何か?など検討した結果、200万円~300万円台でモデルが充実し、マツダのデザイナー(ローレンス=ヴァンデンアッカー)を引き抜くなど、明らかにラインナップの魅力は上がってます。日本への浸透という意味ではメルセデスやBMWの低価格戦略よりも高い戦略性を感じるのですが・・・。
ヴァンデンアッカー渾身の『ルーテシア』はBセグ随一のスタイリッシュなデザインをコンセプトカーそのままに持ち込みました。日産に中村史郎さんが居て、ルノーにヴァンデンアッカーが居る!そして提携先のメルセデスではまだ若いゴードン=ワーグナーが辣腕を振るって大幅に刷新されています(対象年齢が下がってます!)。この三つのブランドが「三位一体」となって日本のユーザーの関心を巻き起こす『デザイン改革』をさらに推し進めるならば、案外トヨタの牙城も脆さを見せるのではないでしょうか?
ルーテシアに続きトゥインゴが高い注目を集めています。次は?いよいよオープンのスペシャルティモデルか?それともDEセグの新型セダン・タリスマンを導入してくるのか?どちらも現在のルノーの日本シェアではなかなか現実味がないですね。しかしルノーが月に3000台くらい売るようになったら、全面展開もありうるのかな。クルマ離れが進んでいるとかいう最近の日本でも、ルノーと同じくそれなりに長いスパンで成長戦略を展開し、BMWを足掛かりにしてシェアを広げているMINIという例もありますし、もちろん前述のアルファロメオの大成功もあります。「日本人の義侠心に火をつけろ!」・・・なんだかルノージャポンは何かを掴みかけているような気がしてなりません。次はルノー車にしてみようかな!いやこの胸騒ぎな感じは・・・今こそルノー乗っておけ!という天啓!?