いつから日本のカーメディアは「ベンチマーク」なんて言葉を使い始めたのでしょうか? それぞれのセグメントでもっとも市場から評価されている1台が決まると、ライバルメーカーはそのクルマを徹底的に分析して次世代モデルへと取り込んでいく・・・ってごくごく平凡で退屈なサイクルを、徹底的に美化した表現に過ぎないですね。「激戦区Cセグ」とか言われたってさ。日本じゃ一番どーでもいいセグメントという印象しかないです。ミニバンやSUVを展開するための汎用プラットフォームが用意されて、様々なタイプのボデーが用意されているだけ・・・。
そんな平凡なCセグ車に乗って走りの質感を高く感じたことなんてここ数年ないですね。VWゴルフがいい!!って日本中のライターがバカみたいに同じことを言っていた時期がありましたが、あれヴィッツやノートと本質的には大差ないクルマだったです。そもそもCセグって何だよ?Bセグと分ける意味なんてあるのかい? コレに乗るくらいならスズキのアルトでいい!って本気でそう思いますね。そりゃ軽自動車とCセグではそれなりの性能差は存在しますけども、軽自動車が全く及ばない領域か?というとそうでもない。「激戦」「Cセグ」「ベンチマーク」って聞くと、頭では勝手にとても丁寧に仕上げられた、気の利いた1台を想像してしまいますけど、メーカーに特別な志など感じないですし、Cセグを望むユーザーには失礼ですがクルマの良し悪しを判じるマトモな感覚すら無いのでは?と思ってしまいます。
そもそもCセグの歴史を紐解くと、その系譜に開発者の魂が爆発したような「傑作車」は驚くほどに少なく、各時代において評価が高いモデル(ベンチマーク)のクルマは、性能が優れているというよりは、メーカーの販売戦略が上手く市場に合致して成功したからだと思います。3大Cセグメント・モデルと言えば「カローラ」「ゴルフ」「シビック」が累計販売台数においてはレジェンドと言える数字を出しています。そもそもここに最大の「矛盾」があります。数千万台という累計販売を積み重ねるには、世界各地に提携工場を造って現地生産をしないと到底に出せるものではありません。世界のどこでも安価で調達できる部品しか使えない・・・その厳しい条件をクリアしない限りは出せる数字ではないです。
この3つのシリーズに加えてフォード・フォーカスとその兄弟車(マツダアクセラ、ボルボV40)が、Cセグの歴史の中で代わる代わる脚光を浴びてきたという「歴史」は、販売台数という点に於いては紛れも無い事実ですが、それがCセグにおける最高のクオリティーを実現したか?については疑問が残ります。カローラとシビックは北米市場で屹立し、そのスペックはフリードとシエンタのような対を成したパクり合いを続けていますし、5代目以降のゴルフの設計は初代フォーカスの思想をそのまま「横領」して成立しています。フォードCセグの主幹を務めたマツダの設計がそのまま吸収されていると言われています。
それらCセグの4大シリーズの歴代モデルにおいて、今も名車としてその先進的な設計を高く評価されるモデルって何ですか? 結局のところそんなモデルなんて無い!とまでは言いませんが、今のCセグの無個性なキャラを見る限りは、「歴史的」と特筆すべきものなど特にありません。今の日本市場で一番売れているCセグと言えばプリウスですが、この「HVの代名詞」となったプリウスのメガなインパクトに比べれば足元にも及ばないのが実情です。世界に広げるためのノックダウン生産なんて純粋に良いクルマへの進化にとっては「百害あって一利無し」じゃないですか?
ちょっと勿体ぶった書き方になりましたが、ハッキリ言いますとこれまで語られてきた「Cセグ・ベンチマーク」なんてクソだー!!!死んじまえー!!! 新型インプレッサを巡る新たなカーメディアの議論の中で「インプレッサは新しいベンチマークか!?」みたいなことがボチボチと書かれてますけども、なんだかとっても違和感があります。「フルタイムAWD」を念頭に置いた「縦置きエンジン」のシャシーに水平対抗エンジンを維持し続けるスバルのやり方がスタンダードになんてなるはずがないです。スバルもまた中国生産なんて甘い考えはさらさら無いようです(旧帝国陸軍を支えた旧中島飛行機が因縁の中国で生産するなんて道義的にも無理?)。スバルにはCセグ・ベンチマークなんてとんでもなくツマラナイものに囚われていないで、縦置き&水平対抗によって実現可能なスバルの理想的な「究極設計」とやらを見せて欲しいですねー!!
FF横置きのトヨタ、ホンダ、VW、フォード、マツダ、ボルボ、メルセデスが、リカルドのようなエンジニアリング・サプライヤーを利用して、ほぼ同じような設定のECU(エンジンコントロールユニット)ソフトを使っていて、50歩100歩の走りをする方向でCセグが全世界でクローンのように作られています。ゴルフもAクラスもアクセラも大差ないなー。その一方で、群馬とインディアナに生産拠点を集約するスバルは物理的にこれらの汎用Cセグよりも高い水準のクルマを目指すことが出来ると思います。特にインプレッサは群馬で全量を組み立てていますから・・・。
かつてインプレッサのように「一極集中生産」によって、独特の設計を可能にしていたCセグの名車がありました。今も全量をイタリア・ミラノで生産するアルファロメオのアルファ147です。全世界生産の汎用Cセグには決して真似できないような、フロントにダブルウィッシュボーンを組み込んだ贅沢なCセグハッチバックでした。現行のジュリエッタは2000年代後半の経営危機の時代に、三菱などのライセンス技術で組み上げられた「粗悪」な設計となっていて残念ですが、新生アルファロメオでは再びユニークなCセグの復活が見られそうです。
もう一つブランドに言及するならば、やはりBMWでしょうか。1erと2erクーペに関しては今もFRシャシーを使ってCセグ車を生産しています。モデルによってはレアな直6ターボエンジンも搭載されています。ただし新型5erと次世代3erが同じプラットフォームになることが発表されていて、1erはMINIのシャシーに変わり、2erクーペには廃止?もしくはトヨタと共通設計のスポーツカー用FRシャシーが充当されるのか?先行きはだいぶ不透明ではあります。現行モデルはドイツと南アフリカによる2カ国枢軸生産ゆえに可能な芸当であり、中国でライセンス生産されるBMWには直6エンジンすら認可されておらずに、V6の2.5Lという一風変わった珍エンジンが中国向けBMW車には搭載されています。
スバル、アルファロメオ、BMW。この3ブランドにはCセグの誇りをこれからも守り続けてくれることを期待します。こだわりのEJエンジンを搭載し続ける「WRX・STI」と、アルファの造ったショートストロークの名機175oTBが搭載される「ジュリエッタ・クワドリフォリオヴァルデ」(アルファロメオにはCセグの後継車種を1750TBで期待します!!!)。そして新しいBMWの顔とも言える説明不要の「M2」。この3台が日本市場から消えるような事態が発生したらCセグの命脈は潰えるのかな・・・。
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joyer
ゴルフが、ヴィッツやノートと本質的には大差ないって、本気で言っていますか?
ゴルフを賛美しているわけではなく、マツダでいえばアクセラとライバルだという認識ですが、ヴィッツやノートとアクセラが大差ないっていう話とイコールですよ?
wpmaster
コメントありがとうございます。
はい。本気で言ってます。
日本仕様ゴルフの格安DCTはBセグ水準ですし、リアがディスクになっても、制動力は諸々のテストでドラムの国産Bセグに負けてるから・・・ってのが根拠です。衝突安全性も公的機関のテストによるとプリウスに負ける(Bセグレベル)。さすがにアクセラだとここまでボロは出ないのですけどね・・・。
joyer
コメントありがとうございます。
なるほど、制動力や安全性は、確かに大差なさそうですね。ただ、フィーリングというか、乗り味は、結構違うと思うのですが・・
wpmaster
国産BセグにはCVTとの協調でエンジンに負荷をかけないECU設定のグレードと、MTを配備して高回転でキレを重視したグレードがあるわけですよ(ヴィッツRS、ノートNISMO・Sなど)。
その振り幅を考えると、欧州の横置きFFなんてその範疇にスッポリ収まるような乗り味だと思いますけどね。ヴィッツもノートもいまやPSAやルノーと兄弟車ですし。違いが無いとはいいませんけども、特筆すべき点も無いと私は思います。