「インプレッサの販売絶好調です!!」みたいな情報があまり入ってこないですね・・・。話題のスバル・新型インプレッサの2Lモデルはもうすでに先行販売が開始されています。先代モデルはアイサイトが付けられる2Lが、自動車税が安くならない(使えない)1.6Lよりも圧倒的に売れたみたいですが(末期になって1.6Lにもアイサイト装備グレードが出た)、いよいよ新型はアイサイトでは最初から全車標準装備になるので、2Lを売るために販売時期をズラすという輸入車ブランドみたいな荒技を仕掛けてきました。プロモーションではウルサイくらいに「愛にあふれてる」とか言ってますけど、販売戦略はちょっとばかり狡猾なんですよね・・・。
ちなみにテーマの「愛」とは徹底した安全性能追求の姿勢を表現したみたいですが、ちょっとシニカルに言わせてもらうと、そこまで言うなら!とりあえず「3大NCAP(米欧日)」の全てで頂点(に近い得点)を必ず取ってくれるの確実なんだと思います。そして間違っても衝突安全基準で、SUVやミニバンに負けるなんてことはないはず!!2016年のテストでSUVとしては異例のハイスコアを出したVWティグアンが相手であろうとも、決して負けるなんてことはないでしょう!!・・・ちょっとショックなことですが、高級セダンの代名詞であるメルセデスの新型Eクラスはティグアンに完敗しました!!!。
改めてインプレッサのスペックを見てみると、自動運転が始まる「変化」な時代になかなかガラパゴスなCセグ車を作ってきましたねー。スバル独自の水平対抗エンジンや縦置きシャシーは最新プラットフォームでも全く変えることはなく、それだけでも十分に異彩を放っていますが、エンジンは先代からそのまま持ち越した排気量は2Lしかも自然吸気がそのまま使われます。ディーゼルもハイブリッドもターボも今のところは無し・・・これもCセグではかなり稀な存在です。自然吸気だけのCセグはインプレッサを除けば、日産(シルフィ)とトヨタ(アリオン/プレミオ)にマイナーなモデルがそれぞれあるだけじゃないでしょうか。インプレッサに関してはMT車が今回は日本向けにはラインナップされておらず、これではいったい何のための自然吸気だろうか?という気もしないでもないですが。
「Cセグで2L自然吸気」というスペックそのものが現状ではかなりレアな存在です。インプレッサのライバル車マツダ・アクセラもいつのまにか2L自然吸気が廃止されました(MT専用として残してほしかった!)。日本導入(復活)が予告されているホンダ・シビックも1.5Lターボが主流になる模様です。HVによるクラス制覇を不動のものにしたプリウスとターボとHVを用意するオーリス。やはりターボとHVで投入されるであろうシビック、それからディーゼルで生き残りをかけるアクセラ。ユーザーに選ぶ楽しさを知ってほしい!とばかりに、新しいパワーユニットの中で程よく適度に散らばっているわけですが、インプレッサだけは「ガソリン自然吸気のみ」と我が道をこれからも歩むようです(トヨタのシステムを使ったHV設定も今後あるらしいけど・・・)。
もちろん「1台くらいはレアなエンジンを採用したクルマがあっていい!」くらいには大抵のクルマ好きは感じているでしょう。ただしCセグ(250万円前後)で月に1000台も売れないとなると廃止したくなるメーカーの事情もよくわかります、維持される為にもそれぞれにある程度の固定支持層がいればいいんですけどね。ファンを掴むほどに「ツボ」を心得た設計に量販Cセグが成り得るか?という点にはいささか疑問を感じます。
自動ブレーキの先陣を切った先代インプレッサは、アイサイトが導入されたモデル後期の方がよく売れていた印象です。アイサイトで売れたのであって、クルマの実力だけではかなり苦しい状況でした(=ファンは多くない?)。今回は「世界最良」をスバルが宣言した新型プラットフォームが使われるということで、俄然に注目度は高いだろう!?と思っていましたが、一般ユーザーからしてみたら「プラットフォームって何?」で、乗り味のどの部分の貢献するのかすら全く意味がわからないかもしれません。
そもそもクルマ好きや自動車ライターが「プラットフォーム」の価値を正確に理解しているのか?と言われたら実際は「否」じゃないですか? プラットフォームがクルマの「性能」を決める!!みたいな怪しげな風潮が、MQBやTNGAが登場してから俄かに「常識」みたいに言われてますけど、新型プラットフォームになってハッキリと先代を越えてきたのはプリウスだけじゃ?マツダの「スカイアクティブシャシー」も、VWの「MQB」も、BMWの「L7シャシー」(F20系&F30系)も、それぞれ先代に比べて絶対的に良化した!!という確信は、いまのところ全く持てません・・・。
それに対してスバルは胸を張って「世界最良」を叫ぶだけあって確実にレベルアップしてますね。プリウスもそうですが、エンジンのスペック面で大きな進化が無いモデルほど、開発者がそれ以外の部分で結果を出しに励むせいか、期待以上の結果になることが多い気がします(エンジンに充てるはずの開発予算が余ってそれが回り回ってクルマの質的向上に貢献している?)。マツダやホンダがエンジンの大改革をして、多くの欧州系ブランドが打開策として日本に適応したディーゼルの投入をする中で、プリウスとインプレッサの「エンジンは変えない派」が大胆で非常に野心的なFMC・・・この対比を自分のカーライフに関連させてどう評価するか?がCセグ選びのコツなんでしょうね。
私があーだこーだと教唆する立場にはないですが、ユーザーもCセグ全体の広がり(ヴァリエーション)の中で、プリウスが、インプレッサが、アクセラが、シビック(未発売)が、どういう立ち位置なのかを掴まないままに、勝手気ままに判断してしまいがちです。買ってからプリウスのエキセントリックなスタイリングであったり、インプレッサのちょっとダルいトルク感の無さだったり、アクセラのズブくなったアクセル&ステアリングフィールだったりに、ジワジワと後悔する可能性もあります。Cセグのような「スモールカー」の量販車を評価することは本当に難しいですし、カーライフを手軽に楽しみたいならば、量販車のどこに感動すればいいか?といった感受性のレベルで「クルマを学ぶ」ことが知ることが大事だと思います。
このFMCは「小手先あるいは誤魔化し」なのか?それとも「偉大なるブレークスルー」なのか?これはプロのカーメディアライターですらしばしばおかしなことを書いている(書かされている)時代ですから、自分自身の知見でしっかり見抜く必要があります。そのための格好の教材が「プリウス」であり「インプレッサ」だと思います。とりあえず気に入ったならばどちらも買って損はないと思いますけどね!!