関係者のご苦労など全く解ってないままに、好き勝手なこといいますけども、今の日本市場はシトロエンにとっては割と組みし易くなっていると思うんですけどねー。その根拠は?というと、低価格の小型車であまりグイグイ来ている感じのモデルが無い! 数年前ならばアクアとフィットHVによる激しい「燃費」抗争が、否応無しに話題をかっさらってしまって、良質なコンパクトカーで定評のあるスズキやマツダが全くお手上げという意味不明な「絶望市場」でしたけども、街中で増え過ぎたアクア&フィットに対して、多少なりともその反動というべきか、価格や燃費にあまり拘らないクルマ選びが広がってきているように感じます。
とにかく今のコンパクトカー市場は、「新しさ」を何よりも切望しているのがひしひしと伝わってきます。例えばノートe-POWERが発売と同時にプリウスを越える売り上げ!!何より受注の8割がe-POWERだそうですから、もはや「低価格」よりも「物珍しさ」こそが普通車コンパクトの選ばれる基準になっているといっていいです。でもこれはちょっと複雑な気分ですね。これまでのコンパクトカーは一体どんな価値を生んで蓄積してきたのでしょうか?自動車ライターに煽動されてVWポロは日本のコンパクトカーに優越すると考えられていたようですが、ポロが今のコンパクトカーに何をもたらしたのか?そもそも日本車に影響を与える何かを持ってしたのか?それすらもだいぶ怪しいです。
さてトレンドが変わって、「物珍しさ」での勝負ならば、とりあえずシトロエンが無敵だと思うんですすよ。ウチの両親もそうですけど団塊世代ってのは「大は小を兼ねる」みたいな価値観でフォーマルでオーソドックスなセダンやミニバンを選んできたようですけど、その世代が全て引退してその下の世代ってのは、何かと新しい物が好きだと言われています。1960年前後生まれは、自動車ライターが一番多い世代でもありますし。某有名ライターはフィアット・パンダ4×4とか、2000年以前のMINIをレストアして購入とか、そんな文化を持つ人々がマネーをたくさん持っているわけですから、シトロエンが本気で攻勢をかければ、MINI(月1500台)くらいは売れるようになりそうですけどね(シトロエンは月200台)。
シトロエンのアイデンティティと言えば、名車2CVのように「実用かつ個性的」で日常生活をトレンディに彩る社会的使命を強く意識したクルマ作り!!・・・というのはリーマンショック以降の話です。混乱から立ち直った2010年以降のシトロエンは1960年代頃のブランドの思想へと「先祖返り」してからのコンセプトが日本の現行ラインナップの全てです!! それ以前は世界中の大手メーカーと変わらないような適度にチャラ付いたフツーのクルマ作ってました(ハイドロサスとかバブリーですね)。2012年からのマツダが「魂動」と言われるように、シトロエンもほぼ同時期に中長期的なビジョンを掲げていて「DS」をいうプレミアムブランドを設けるなど自らを世界に適合させています。
あまりクルマ好きや自動車ライターが言いたがらないことですが、シトロエンC4カクタスのようにウレタンパーツを使うなど、日本で展開する他のブランドでは「まず見られない」ような変わったことがシトロエンはできるか? まるで1960年代の「2CV」を長いタームで販売していた時にあった人々とクルマの幸せな「距離感」を、衝突安全だったり排ガス規制だったりで雁字搦めで息苦しささえ感じる21世紀に登場させられたのか意図的なのか(VWやトヨタに対するアンチテーゼ)? これが全部最初から計算づくだったならば、その全貌をデザインした人は人知を越えた天才じゃないか?と思うんです!!
「オマエが言ってる『距離感』って何だ?」って人もいるかもしれないですが、私が小学生の頃(1980年代)には、なかなかエンジンが掛からないVWビートルを、ドアを開けてダッシュで押しながらエンジンの調子が早く良くならないか見計らっているお兄さんを普通に通学路で見かけました。今じゃ押して走れる現行モデルなんてスズキのアルトくらいじゃないですかね? 現行のVWザ・ビートルなんて相当に立派なボデーになっちゃってますし・・・いや間違っても危ないから公道を押して走っちゃダメです。けれども初めてシトロエンC4カクタスを見た時に、このクルマなら押して走っても絵になるかも・・・(笑)なんて思ったわけですよ。小学生低学年のころに見た風景と瞬時につながりましたよ。ほんの30年前の情景すら「無かった」かのように忘れていたのに、このクルマのおかげで鮮やかに甦りました。
なんでシトロエンはこんなクルマを作ったのか?に話を戻すと、シトロエンのデザイナーにセンスと才能が多分にあったのは間違いないですけども、それ以上にこのデザインが生まれた要因となったのが「中国」だと思います。シトロエンのトレビアーンなデザイナーが、これからシトロエンのメイン市場になる中国に出向いて大きくインスパイアされたんじゃないかと・・・。そしてC4ピカソ、C4カクタスから新型C3へとつながっているデザインコンセプトが生まれて、その根底にはフランス人から見た中国の姿があるように思います。
ヨーロッパ人の眼に東アジアはどのように映るのでしょうか? 例えばアメリカで大人気のブラックジョーク満載のアニメ「サウスパーク」では、中国人は一様に眼が細くて画一的な「顔」で描かれます。これがどうやら、C4カクタスの「顔」にとっても良く似ていると思うんですよね。あー!!なるほど!!これはフランス人の眼から見た「中国」をイメージした時の「顔」なのか。こんなこと書いてしまうとシトロエンの人気に悪影響が出てしまいそうですけど、いずれどこかで誰かが指摘するのは時間の問題でしょうから、それを踏まえてもっともっと前向きな話をしたいと思います。
全ては2001年の中国のWTO加盟から始まって、それから10年も経たずに日本のGDPを抜き去り、日本の最重要な貿易相手国としての地位に就きました。もしかしたら2002年にスカイラインGT-R、スープラ、シルビア、RX7が一気に姿を消したのは排ガス規制の問題だけじゃなくて、中国市場への対応で各メーカーがナーバスになったからなのかもしれません。日本メーカーは中国人はスポーツカーなんて買わない!!と思ってたかもしれないですが、市場開放からほんの僅かの内に中国は世界有数のフェラーリ、ランボルギーニ、ポルシェを購入する国になりました。
ランエボだってWRX・STIだってよく売れます。先日の400台限定のS207が1日で完売した背景には中国の並行輸入業者が暗躍したとも言われています。そういえば新型のシビックtypeRも全然見かけないですね。半分くらいはすでに中国へ運ばれているのかも・・・。わざわざ輸入車を買わなくても中国はすでに国内生産台数が2位のアメリカを大きく引き離して断トツの1位です。VWやPSAに対してDCTが湿気に弱いから、日本のステップATを使え!!とかなり強硬なクレームを出したり、スズキにも超絶デザインのコンパクト・クーペを作らせたり、マツダにも国内専用のSUVクーペを作らせたり・・・。いまや世界一クルマにウルサイ国といってもいいです。
「良いクルマだから!!」という理由で3世代のアテンザが全て作られているってのも素晴らしいですね!!ぜひ日本に逆輸入してくれー。2.5Lの「V6」自然吸気エンジンを積んだBMW5er(F10)も作られているんだとか。日本の直4ターボのBMWよリよっぽど快適なんじゃないの〜? ヤフーのコメント欄などを見ていると、日本人は中国の自動車産業に対してまだまだ相当な偏見があるようですが、今となっては中国市場に比べれば、日本市場なんて販売の9割が日本車ですから海外ブランドにとっては、全くやる気が出ない「ゴミ箱」みたいな市場に過ぎません。東京モーターショーにはフェラーリもランボルギーニも来ないですけど、上海や北京のモーターショーには大挙してやってきます。
そんでもって中国市場って結構センスがいいんだと思います。各ブランドのグローバルモデルの8割9割はすでに中国市場の好みを反映したものになってますけども、さすがは4000年の文化を持つ国なんでしょうね、中国市場が頭角を顕してからというもの、あらゆるレベルのクルマのデザインが、何らかの「意味」を持つようになったと感じています。ランドローバーやジープなどのクロスカントリー車ブランドのここ数年の変貌ぶりを見ても、シトロエン、マツダ、スズキ、オペルもそうですが、ブランドコンセプトを貫くストーリーを一生懸命に語っているようなデザインに見えて仕方ないです(どんなだよ?)。
とりあえず中国市場が飽和して、クルマ離れが始まったとか言われない限りは、カーメディアが散々に騒ぎ立てる「完全自動運転」へと自動車産業全体が眼の色を変えて突き進むなんてことは起こらないと思いますよ。もちろん「実証実験をやってます!!」とこれ見よがしに技術の高さのアピール合戦には余念がないでしょうけども・・・。中国がクルマ好きでいてくれる限りは、日本でもまだまだカーライフが愉しめるんじゃないでしょうか。