なんでわざわざフランスの商用車を輸入してきて日本で売るのだろうか!? 『商用車』というのは、その国の産業の発展に寄与できるスペックのクルマを、メーカーはできるだけ安価に、国は税金を優遇することを前提に存在意義が見出せるクルマ。つまりフランスから日本に送られた時点で、安価でも税制優遇もないクルマになる。カングーは軽貨物運送業のエース。フランス人にとってカングーとは、日本人にとってのダイハツハイゼットカーゴやスズキエブリィみたいな存在。これを自家用車にして喜ぶ感覚ってのは、そのクルマが国境を越えない限りは起こらないことです。
日本ではありふれた存在の軽自動車。最近ではオシャレなデザインが増えてますけど、ひと昔前ならば白いボデーに黄色いナンバーで一目見ただけではスズキ、ダイハツ、マツダ、スバル、三菱それともホンダ!?・・・とよくわからないくらい似てました。最近ではマツダがスズキのOEMを、スバルがダイハツのOEMを売るようになり、日産には三菱OEMが、トヨタにはダイハツOEMが入っています。光岡にも軽自動車があってもいいんじゃない!?
そんな日本の軽自動車ですが、イタリアではかなりオシャレなクルマとして人気があるらしいです。フェラーリのデザイナーを務めた人の愛車が旧式のアルトだと聞いた時には、どーなってんの!?と思いましたが、イタリアの街並みに溶け込むアルト・・・なるほど。カングーと同じ構造ですね。世界で一番カングーが好きなのは日本じゃないの!?
フランス車あるあるですが、何も事前に調べずにディーラーに行って希望の車種のグレードを聞かれて、AWDのグレードはありますか!?みたいなことを聞くと、コイツは何を言っているんだ!?という目で見られます。そもそもフランス車にはAWDという概念すらないらしいです。パリなんて北緯49度で北海道の稚内(北緯45度)よりも北にあるのに、あまり雪とか降るイメージないですから、生活レベルの車に関してはAWDなんて『需要』がないのでしょうね。まあ東京に住んでいてもAWDは需要ないですけども・・・。
フランス人から見ればAWDなんてのは、日本とかドイツの変態的な自動車マニア工業が自己満足でやってるだけ・・・。PSAの販売するモデルでAWDが設定されているのは(あるのかい!!)、シトロエンC4エアクロスとプジョー4008のみで、どちらも三菱RVRをベースとするOEM車です。三菱の欧州生産拠点は全て閉鎖されているので、水島で作っているようです(以前から岡山製シトロエン&プジョーはあった)。フランス車じゃなくて日本車じゃん。ルノーは・・・というと傘下に日産がいますから、エクストレイスをベースにしたAWDシステムが供給されてますが、AWD車はコレオスなど一部のSUVのみです。とにかく日本に入ってくるフランス車(ブガティ除く)はほぼFF。中にはRRとかありますけど。
ユーザー目線で見てて思うのですが、日本やドイツのメーカーは、どーでもいいところに労力使っていてしょうがねーな・・・って。カーメディアが怖いから車体剛性をどんどん上げて、有名ブランドサプライヤーのダンパー(ビルシュタイン、テネコ、サックス)やブレーキ(ブレンボ、曙)を装備したり・・・。サーキット専用モデルならわかるんですけどね。何かに取り憑かれたかのように、どんなモデルでもとりあえず『車体剛性が上がりました!!』っていう客観的なデータを絶対に組み込まないと役員からの販売許可が出ないのか!? 実際に乗ってみると、低速トルクもHVやターボで太めになっているので、雑に操作するとミッションが飲み込めなくて、シャクったり、硬めのバネが軽い車体を跳ね上げたりで、結構悲惨な状態に陥る高性能車が・・・。そんな『素朴な疑問』に対する痛快な答えがフランス車だったりすることも。
PSAやボルボがアイシンAW6AT/8ATを全面的に使い出して、日本のカーメディアがにわかに大慌てになったようで、レビューには必ずといっていいほど「アイシンAWはトヨタ向けと海外向けでは全く別物!!」みたいなことが書いてあった時期がありました。それまで『最先端のミッションはDCT!!』とみなさんで大合唱してましたから、欧州メーカーのトレンドの変化をみて『これはヤバイことになった』と思ったんでしょうね。そもそもDCTなんて出来損ないじゃん。日本みたいにAT限定免許が溢れている市場だと、『クリープしないと不便』という声が続出するのは当然です。これにクリープ機能を追加して、始動時のギクシャク感を改良して精度を高めて行けば行くほど耐久性に弱点が露呈するってことを、フィアットもVWもとっくに気がついているはずなんですが、(最廉価市場の)インドでも売っているメーカーはさすがにたくましいですね・・・それくらいじゃ諦めない。リコールなんて怖くない!!高温多湿な環境で乗る中国人や日本人がバカなだけとでも思ってんのかな!?
アウディとかアルファロメオに乗っている人はDCTはスポーティでコストがかかっている最高のミッションだと思い込んでいるようですが、本人がそれでいいと納得しているならまあいいんじゃないですかね。アウディもアルファロメオも完全に方向性を見失っているから、それがそのまま日本での販売に現れてます。まさかアウディがMINIに抜かれることになるとは!! PSAやボルボはあまり車体剛性にはこだわっていないようで、なんだか日本車やドイツ車が失いつつある、前のモデルに比べて『より快適に作る!!』というシンプルな大前提を、フランスとスウェーデンのメーカーが守っているような格好になっています。実際にプジョー、シトロエン、ボルボは揃って日本市場でのシェアを伸ばしていて快調です。
高級車ではないけど、オールマイティで完成度が高い横置きのロックアップ式ATが付いてくるブランドは他に、MINI、BMW(FFモデル)、マツダがありますが、いずれも評価が高いです。トヨタはCVT、VWはDCTで作らなきゃいけない事情があるんでしょうけど、レクサスだとATになるし。アウディも上級モデルや『S』だとATになります。CVTやDCTがいいなら上級モデルでもそれを使うべきだと思うのですが。結局はミッションの価格なんてのはトルク容量次第であり、DCTが高コストなのは、BMW・Mやランエボの大トルクを支えるゲトラグ製DCTや、GT-R用に専用設計された愛知工業製DCTだったり、ポルシェのボルグワーナー製PDKの話なんですけどね・・・。
さて・・・くだらねー日独のスポーツカーマインドなんて無視して、使い勝手と乗り心地が良いフランス車を楽しむってのはどーですかね。スライドドアの段階で却下とかいってる人はドイツ車にしておけばいいわけです。カングーだけでなくて、プジョーの『パートネー・ティーピー』もディーゼル搭載モデルを日本で発売したら面白いと思います。日本のユーザーがマツダに期待していたディーゼルミニバンが実現しないようなので、300万円以下ならプレマシーユーザーをごっそり持っていけるはず。結局のところ日本人はフランスの生活に憧れているんですよ。だからドイツやイタリアではなく、フランスの商用車がオシャレに映るのだと思います。フランス車がバカ売れして日独のアホくさい『剛性・ダンパー・cd値・多段式ミッション・燃費』の不毛な総合競争が改まってくれればいいなと思いますね・・・マツダ、スバル、トヨタ、ホンダ、日産、BMW、メルセデス、アウディ、VW、ポルシェは何か間違っている!!