去年(2016年)の暮れにトヨタがC-HRを発表すると翌日にマツダが2月に発売予定のCX5の価格を公開するなど、ネット時代を象徴するようなシビアな『情報戦』が展開されています。現在のトヨタ繁栄(圧倒的な日本シェア)の礎となっているプリウスも、元々はスーパー『ダンピング』戦略によって生まれましたから、大ヒット車を生む最大の要素は『価格』です。
かつてのマツダ、そして今のBMWジャパンのように、本体価格から大幅に値引きして販売する販売では、大衆を動員することはなかなか難しいみたいですね。まずは『本体価格』『燃費』『自動ブレーキ』。良し悪しは別としてこれが『大ヒットの三原則』であることは否定できない事実。ただし最近では『燃費』競争はやらない!!というメーカーが続々と登場しています。燃費の鬼といえば『トヨタ』『スズキ』『BMW』。この3ブランドが続々と発表するモード燃費はエグい!!
どこまで実効性があるのかわからないですけども、とにかく『過剰』な印象しか受けません。実際に燃費を伸ばすために弄っているところは『車重』と『ミッション』ですけども、あまりに軽すぎて衝突安全性が犠牲になってないか!?あまりに多段化しすぎて乗り味が犠牲になってないか!? この過当競争に追従するために日産ノートe-POWERの最もモード燃費が伸びるグレードでは、なんと『エアコンレス』になってます。熱帯並みに暑い日本の夏はどーするの!?北海道専用なのか!?
それに対して真っ向から『燃費』を否定し始めているのが、『マツダ』『ダイハツ』『ジャガー&ランドローバー』です。マツダのBセグ級のコンパクトSUV『CX3』に2L自然吸気エンジンを搭載したモデルは、北米でも欧州でも既に発売済みですが、日本にも導入してきました。25km/Lくらいが当たり前のBセグのモード燃費に対して、2Lガソリン車は17.0km/L。しかも日本初の『WLTCモード』での数値も出ていて『市街地12.2km』とのこと。プリウスユーザーから見れば不満かもしれないですが、ガソリンターボの輸入車が相手なら楽勝できる数値です。HVにはかなわないけど、ガソリンターボよりは合理的ですよ!!しかも乗り味を追求するなら自然吸気が一番ですよ!!というのがマツダの主張らしい。
ダイハツは、FMCで登場した『ミライース』が、先代モデルとほとんど変わらないモード燃費で登場しました。車体を軽くして、燃費が向上するはずが、そこで稼いだマージンを低速トルクに使ったとのこと。よく見ると新型ミライースはなかなかいいデザインですね。ホンダやスズキの軽自動車のような『奇抜さ』を排除して、堂々と正攻法でデザインしてます。福野さんも連載でコクピットのレイアウトがとても良い!!と太鼓判を押しています。
どうやらダイハツは『高級な軽自動車』というコンセプトをブランドの最廉価なモデルで目指したらしい。上級モデルのムーブは、ワゴンRと並んで一時期バカ売れしましたが、大半の無知なクルマ好きは『軽』だから売れたと思っているみたいですが、歴代ムーブの内装の進化による居住性の向上は、全然バカにできないですよ!!フルオプションだと200万円を超えちゃいますけど、それくらいの価値は十分にあります。その経験がミライースに降りてきたようです。これからは『燃費』じゃない!!という明確な意思表示が広く伝わるといいですね。さらに今年の東京MSではミライースのスポーツモデルが発表されMT車ができるらしい・・・。
最後にジャガー&ランドローバーですが、ジャガーはアルミボデーの先駆的なブランド。最近ではメルセデス、BMW、アウディがレクサスに対抗する手段としてアルミに手を出しましたが、ドイツ車が軽量化と燃費の向上を狙っているのに対して、ジャガーのアルミ車は軽くないんですよね。アルミでゴテゴテにスポーツカーのバスタブ構造みたいな設計を狙ってます。当然に『燃費』も完全にセレブ仕様。3シリーズをコピーしたと言われる『XE』の2Lガソリンモデルのモード燃費は、320iの16.0km/Lに対して11.2km/L。同じZF8ATを使うのになんでこんなに差があるのか!?しかもアルミを使っているのはXEの方なのに。ノリ比べれば『走り』のXEと、『燃費』の3シリーズは明確。スポーツカーメーカーとプレミアムメーカーの差でしょうか。
さて『燃費はもういいや!!』という雰囲気が出てきたし、『自動ブレーキは当たり前』になってきた2017年いよいよ最大のファクターは『価格』。C-HRとCX5のように水面下でものすごい駆け引きが行われていると予想されるのが、ズバリ『シビック VS カムリ』。どちらも発売間近と言われていて、ライター向けの試乗会も既に開催されているみたいですが、価格だけはまだ発表されていません。某スクープ雑誌によるとシビックが278万円〜、カムリHVが3330万円〜らしいですが、まだ正式には出てないのでどーなるのやら。1.5Lターボと2.5Lハイブリッドですから妥当な価格差ですけども、最高出力で見ると結構いい勝負です。燃費もそれほど変わらない。ただしWLTCモード(2018年から義務化)の『市街地』の数値ではカムリHVが上回りそうです。
さらに際どいのが両者のサイズ。車格で考えると4800mm級のカムリなんでしょうけども、使い勝手がよくそれなりのサイズ感(3シリーズとほぼ同じ)のシビックも十分に比較対象になるでしょうし、潜在的ユーザーの大部分はシビックのサイズを支持するのでは!? 当然にトヨタもこれを認識してますから、もしかしたらシビックと同じ水準までの『大ダンピング戦略』が発動するかも。シビックの価格もここ数年のFFセダン市場で大健闘したアテンザ20Sプロアクティブの287万円を念頭に検討されているようです。
輸入車陣営も相当にピリピリしているようで、年内に導入が予定されている「アルファロメオ・ジュリア」と「シボレー・カマロ」もまだ価格発表を先延ばししています。どちらもベースモデルは、2Lガソリンターボで、北米基準なので280psまで絞り出しています。北米ではGMとクライスラーの両陣営を代表するモデルとして評価が高く、ジュリアはイタリア・カッシーノのフィアット工場(ミラノではない)、カマロはミシガン州のランシングのGM工場で作られていて、どちらも本国生産なのはエンスーにも納得できるポイントです。
イタリアメディアは、『ジュリアは3シリーズを超えている!!』と報道し、アメリカメディアが『カマロは320iに完全勝利!!』と報じた内容の記事を公式HPに貼り付けるなどどちらも自信作であることをうかがわせます(3シリーズは最高の咬ませ犬として大人気ですねー)。価格に関してはジュリエッタとの兼ね合いから500万円前後が予想されるジュリアに対して、カマロは本国で260万円程度の低価格を利して400万円台を検討しているとのこと。しかも日本や欧州を本気で攻略するために先代から全長を縮めて4780mmとなっていて、これも日本でのベストサイズという気がします。幻に終わったマスタングの右ハンドルベースモデル(2.3Lターボ)も日本価格を400万円以下までを想定していたようなので、価格もかなりリアルな数字ではあります。これで350万円を下回るようなら、シビック&カムリHVの争いにまで影響を与えそうです。さてさて秋が楽しみですねー。