前回は柄にもなく「かっこいいSUV」を特集してみたところ、いつもの1.5倍くらいもお客さんが見にきてくれました。SUVの人気ってやっぱりすごいんだなー(よし調子に乗ってもう1回書いてみよう!!)。もちろん本気で5台を選びましたよ!!前回も今回も。前回はスポーティなデザインで人気の5ブランドが、プライドを賭けて仕上げてきた珠玉のベストデザインばかりを5台選びました。メルセデス、BMW、プジョー、マツダ、スバルそれぞれのブランド内でも『最良』と言っていいくらいのグッドデザインばかり!!改めてSUVへの各メーカーの情熱がよくわかります(それが伝えたかったこと!!)。
しかし、デザインの上手いメーカーが計算づくで作ったモデルを列挙して、「かっこいいよねー」ってのは、プロのカーメディアがやればいいこと。・・・と思ったので、「走行性能には目をつぶります!!」みたいな余計なことにも言及しました。全くもってSUVへの偏見以外の何物でもないのですけど、加熱気味のSUV人気に対して、ちょっと水を差してやろう!!というスタンスで書いていたことは・・・素直に認めます。
それでも率直に記事を出した後にしみじみ思ったんですよ。今まで見てきたSUVの中には、圧倒的な存在感が完全に乗用車の枠をはみ出した、「傑車」と呼べるようなクルマもあったっけなー。あの「艶・艶・艶」を目の当たりにして、ちょっとばかり鳥肌たったのも確か。そんなSUVを安易に見下すのはフェアーじゃない!!と勝手な一人相撲の末に「もう一度書かなければ!!」と思った次第です。ということで、これを選べば「本当にカッコいい」というSUVを5台選んで見ました。
第5位ジープ・ラングラー(396万円〜)
やはりジープはオーバーフェンダーのボデーだろ!!ラングラーの標準装備のタイヤは17/18インチ(グレードによって変わる)なんですが、オーバーフェンダーだとタイヤがやたらと大きく見えて迫力が増します。今時の欧州ブランドのSUVでは20インチなんて当たり前になってきてますけど、それよりも断然にインパクトがある!!キャビンスペースを目一杯取ろうとする日本車とは根本的に設計のポリシーが違う!!そこに色気があるんですわ。
日本車もドイツ車もSUVに限らずにやたらとインチアップが好きで、表向きの理由はオンロード性能の追求らしいですけども、明らかに発言力が強くなりすぎているデザイン部門からの要求が背景にあると思います。欧州ブランドではデザイン統括責任者が副CEOになっているケースはザラ。マツダもデザイナー部門出身者が新たにロードスターの主査になっていて、とあるライターが「メカニズムの質問をすると逃げられる!!」と不満を漏らしていましたっけ。
ジープも最近では欧州ブランドに近いような都市型SUVモデルが増えていて、ラインナップもこのラングラー以外は、アルファロメオ、フィアット、三菱、メルセデスのシャシーを使った『寄せ集め軍団』となっています。ラングラーよりもふた回り以上も小ぶりで、ほぼコンパクトカーにしか見えないコンパス(三菱ベース)やレネゲード(フィアットベース)でも17インチを履きこなしてますねー。同じジープで自社設計と『OEM』では全然温度差が違いますねー(当たり前ですけど)。だからラングラーってことですが、このモデルがなくなったらジープって何?ですよね(他が全部クソとは言ってませんよー)。
第4位 レンジローバー・イヴォーグ(502万円〜)
欧州のSUVブームに火をつけたのは日産だと言われています。キャッシュカイとジュークの大ヒットによって、フランスを震源に欧州全域に広がったわけですが、時を同じくしてイギリスから大ヒットSUVが生まれました。2000年にドイツのBMWのM&A戦略から外れてフォードに売却されたランドローバーが、ポルシェ・カイエンに対抗して傑作車「レンジローバー・スポーツ」を生み出したように、今度はフォードに捨てられたランドローバーが英国政府と二人三脚で作ったのが「レンジローバー・イヴォーグ」です。
30歳そこそこの新進気鋭のデザイナー・ロバート=メルヴィルがまとめたデザインは、今見てもため息が出ますわ。よくできてる!!中身はマツダ(旧フォード)の先代アクセラのシャシーを使い、マツダの設計したMZRエンジンをターボ化して搭載しています。中身は単なる乗用車じゃん!!と嗤うことなかれ。マツダMZRの2Lエンジンは極めてレアなショートストロークです!!フォードのエコブーストが煮詰め不足で、ピークがたった5500rpmなのは残念ですが、4700とか5000rpmでしかないVWやBMWのターボよりは断然に気持ちいいはず。・・・とにかくデザインと「ストーリー」で魅せてくれる稀代のスターSUVです。
第3位 ボルボXC60(未定)
まだ日本での発売は始まってないですけども、スバルのSUVのデザインが絶妙に決まるように、ボルボの質実剛健なブランドイメージがそのまま「実用車としての美しさ」を醸し出しています。ラングラーやイヴォーグとは全く別の種類の魅力を放っています。おそらく日本価格は600万円前後でしょうか。前回の5台は全て500万円以下から選んでますが、このXC60はそれらとは別格で中身がぎっしりしたモデルです。簡単に言うと、ボルボのフラッグシップSUVであるXC90と同じメカニズムのままにボデーサイズを縮めたクルマ。
フロントサスはダブルウィッシュボーンで、直4ながらもターボ&スーパーチャージャーのダブル過給がついた手の込んだユニットが用意されています。ボルボが考えているのは「オンロードの王者」の首を獲ることだと思うのですが、メカニズムへの配慮だったりベンチマークをあえて外して独自路線を進む姿勢だったりを見る限りでは、その本気度はメルセデスやBMWとは桁違いかと・・・。
それほど過激ではないデザイン、しかも洗練されている。内装もあのXC90から移植した「クラフトマンシップ」溢れる工芸品的な造形美が溢れていて大満足。先ほども書きましたけど、このクラスのSUVでは他に例を見ない豪華サス&2種の過給を仕込んだエンジン。・・・ボルボってここまでできるブランドなんだ!!もうフォード傘下の頃の知名度先行で中身は周回遅れ・・・といった以前のボルボではなくなってます。
第2位 ポルシェ・マカン(699万円〜)
ボルボXC60が狙う「現役クラス王者」がこのマカンです。某英国雑誌ではマカンターボが、サーキットで並み居るスポーツカーを凌駕した!!とショッキングなレビューを掲載したことで知られるモデルです。「ポルシェがSUVなんて邪道過ぎる!!失望した!!」とか怒るニワカなポルシェファンも結構いるみたいですけど、このスタイル見た瞬間にあの伝説のポルシェのラリーカーでもあった「959」の面影が浮かばない輩はニワカだ。911ターボに使われるAWDシステムは、パリダカに参戦した「959」がその開発に大きく貢献したわけです。
もっともポルシェはアウディ譲りのマカンにオフロード性能を追求するつもりはさらさらないようで、あくまでオンロードSUVの頂点を見据えた設計になっています。アウディ譲りの直4ターボ252psエンジンは、7000rpm近くまで吹け上がるので、他のドイツブランドの2Lターボとは一線を画するフィールだ!!なんて絶賛されています。実際乗って見るとクルマが重いので、スルスルと回転が上がるかも。X3の直4ターボだと確かにここまで気持ちよくは回らないかも。とはいえターボでも官能を求めるならケイマンにしたらいいよ。
マカンは、ポルシェのブランドヒストリーに心酔している人にしかわからない、独特のストーリー性を持つエクステリアが素晴らしい!!それはMINIやザ・ビートルやフィアット500を見て「可愛らしい」と思う感覚に近いかもしれません。本当にかっこいいクルマとは、『教養』がある人間にしか理解できない世界にちょっとは足を踏み入れているものなんです。
第1位 スズキ・ジムニー(129万円〜)
さてマカンは完全にフリでした。スズキ・ジムニーこのクルマの神々しい輝きも、「教養」を要求します。わからないク◯は、BMW・X5とかトヨタCH-Rとか乗ってればいいよ。別にそれらがダサいってことはないですよー。ただジムニーとは真逆の存在ってだけ・・・。ここから先はもう感性の世界だから、わからない人にはわからないままですけどねー。
このジムニーとは、スズキとユーザーとの熱い絆です。もはや化石としか言いようがない「手動切り変え式のフルタイム直結AWD」なんてのは、知識のない素人が使ったら大怪我するかも!?ってくらいの「プロ仕様」な機能です。街中を爆走するKカーなんて郊外に行けばいくらでも見かけますけど、ジムニーで暴走する人ってあまりいないですよね。なぜなら結構ガチで怖いから。しっかりとしたAWDの知識を持った人しか走らせられない「際どい」存在なんです。
厄介なことにAWDの運転技術には「都市伝説」がたくさんあります。自動車歴40年のベテランがコメントしても人によって言ってることがバラバラだったりで、たまにオッサンがドヤ顔で説明しているのを聞いて苦笑いしたくなることがありますよねー(私は東京在住なのでコメントする立場にないですが)。正しい知識は北海道などの寒冷地のベテランドライバーに訊くのが早いかも。北海道ではスバルやマツダが人気ですねー。スポーツカーやミニバンを除けば、全モデルにAWDを設定している両ブランドの信頼性は高いようです。ジムニーの手動切り替えってのはあくまで「スポーツカー」的な装備なんだと思います。オフロード走破のための機能。
ちなみにこのクルマは軽自動車規格ながら、ラダーフレームシャシーによる縦置きFRベース車です。軽の世界ではミッドシップやRRは結構当たり前に存在しますけど、FRってのは珍しいです(もしかしたらこのクルマだけかも)。とにかく設計の個性を考えれば、世界でも有数のレアなクルマですから、それだけでもエンスー度は高いですし、ファンが多いのも頷けます。