しばしば低スペック車の代名詞のように語られる「トーションビーム」を後輪のサスペンションに配したモデル。『サスペンション』とは操縦性と乗り心地に決定的な違いを見せつける重要な部品であり、これの選択でクルマを選ぶ人も多いのでは!? とりあえず乗り心地に関してはコイルバネ、エアサスペンションの反発係数と、その動きを抑え込むショックアブソーバーの働きが決め手と言われていますが、操縦性に関しては色々な見解が・・・。
ちょっとややこしくなるので後輪限定で話を進めると、一般的にどこのメーカーも車重1500kgくらいを境にして、それよりも軽いモデルには『車軸式』と呼ばれる、トーションビーム、ドデオンアスクルもしくは、より原始的なトレーリングアームなどが使われ、重いモデルには『独立懸架式』に分類されるストラット、ダブルウィッシュボーン、マルチリンクと充てがう。簡単に言うと軽いクルマは路面変化に対して、タイヤの柔軟性と少ないアーム容量(アライメント容量)である程度はカバーできるけど、重いクルマは積極的にタイヤ面が動かせる大きなアーム容量が安定走行のためには望ましいということらしい。
ちょっと物議を醸したのが1990年代に登場した某ドイツブランドのクルマのリコール騒動でした。トーションビームを使っていることを隠していたスポーツタイプのクルマが横転事故を起こしたというので、どこのメーカーも右に倣えでマルチリンクが普及します。しかしマルチリンクが万能か!?というとそーでもない。特に後輪駆動車における後輪マルチリンク採用は妥協の産物だという指摘もあります。フォードマスタングが『車軸式』リジッドタイプの後輪サスをやめBMWに近い『独立懸架式』インテグラルアームに変わったけども、なんだかアグレッシブさが減ったという意見が多数・・・。
自動車技術を素人が語るのはかなり危険ではあります。どのサスペンションが正解なのか!?は各メーカーによって考え方が違うし、サスペンションにコストがかけられる高級車だとしても、多くのメーカーが選択しているのは『アーム』形状ではなく、エアサスの採用あるいは、バネレートが変えられる可変ダンパーの採用でしょうか。看過できないのは、ユーザーはバカばっかりだから真剣に作り込む必要はない・・・と考えてる節が各国メーカーから感じられます。特にマルチリンクを使う高級車から・・・。そんなふざけたエンジニアリングの時代だから、腹くくって「トーションビーマー」乗って見ませんか?
第5位 マツダ・CX3(210万円〜)
マツダといえば、2000年代初頭に『サスペンション』で他社に違いを見せつける!!と意気込み、見事アテンザ、アクセラ、デミオをヒットさせた実績をもっています。長年スポーツカーの販売を継続している数少ないメーカーなので、サスペンション形式の研究も進んでいて、『操縦性』『静粛性』などのパラメータに応じてサスペンションを使い分けます。2002年の新生マツダ旗揚げ時には、『前・後』で『マルチ・マルチ』(ミレーニア)、『DWB・マルチ』(アテンザ)、『DWB・DWB』(NBロードスター)、『ストラット・マルチ』(アクセラ)、『ストラット・トーション』(デミオ)・・・と様々なバリエーションがありましたが、スカイアクティブ後の現在は3パターンのみに縮小されました。
経営不振を経験し、コストカットに大きく動く中で『サスペンション』によるブランディングはキャンセルされましたが、スカイアクティブ前と比べて、統合された3組のサスペンションの出来栄えはそれぞれにクラス最高水準だという声もあります。その中で『ストラット・トーション』の組み合わせを先代から引き継いで、進化させたものがデミオとCX3に充当されています。特にディーゼル搭載モデルなどは、これ「トーションか!?」と思うくらいの重厚感が出てます。これをMINIのようにリアをマルチ化してしまうと車重に比して安定方向に振れ過ぎてしまうようで、MINIはわざとハンドリングをある程度崩壊させて面白い乗り味を演出しています。そんなややこしい設計などしなくてもMINIに比する走りを実現したデミオとCX3。なかなかやる気の出る「トーションビーム」モデルです。
第4位 ホンダ・ヴェゼル(207万円〜)
やはりサスペンションといったらホンダ。特に横置きエンジンFFモデルを高性能化させようと奮闘した時期が、そのままホンダのミラクルな急成長期に重なります。2001年にフィットを発売し、北米市場でも売れる骨太なBセグメントへと成長させます。ホンダがめざす21世紀の『ミニマニズム』美学のセンターを歩み続けた同シリーズは、セダン、ワゴン、スポーツカーなど幾多の派生モデルを生みつつ、2013年にSUVへとたどり着きます。『トーションビーマー』を感じさせない確かな手応えのあるドライビング。ガソリンエンジンでVテックのポテンシャルを楽しむも良いし、HVに新たに組み合わされたDCTで、モーターパワー&直結という『未知の体験』を!!いやいや、ホンダはすでにCR-ZにおいてHVとMTをマッチングさせています。面白い要素いっぱいのグローバルなトーションビーマーはどーでしょうか!?
第3位 シトロエンC3(219万円〜)
欧州メーカーで最高レベルの「トーションビーマー」はやはりシトロエン。快適か不快かをとにかく数値化して優劣を決めてしまおう!!という絶望的なカーグラフィックとかいう雑誌ありますけど、あれ試乗が趣味の人から見れば、全然役に立たない数字だってわかる。そして他のカーメディアは、日本やドイツのメーカーは資本が強力だからいいクルマを作るはずという「希望的憶測」でフランス車を軽視するケースもあったり。失礼極まりない。
『シトロエンを無視してトーションビームを語るな!!』ってくらいに小型車のサスペンションの世界で存在感を発揮してきたブランド。PSAの一員としてエンジンもミッションもシャシーもグループの『連産品』を使いますが、やけに軽量化を頑張ったボデーと、個性&ハイセンスな内装と、どこにもない配合のストローク量を誇る足回りだけで『シトロエンは健在だ!!』と示してくれている。
第2位 日産ジューク(173万円〜)
元日産の水野さんによると、このメーカーはかなり早い段階から『SUV&スポーツカー』というジャンルに焦点を合わせていたらしい。GT-Rの第二弾はSUVボデーになる予定もあったようで、ポルシェやランドローバーが競っているオンロード性能を追求したスーパースポーツSUVの時代を予測していたようです。このジュークも最初からエクストリームな商品展開が折り込み済みだったようで、欧州では5000万円のVR38DETTが搭載された限定モデルが市販されました(もちろんAWDでリアはダブルウィッシュボーンに変わってます)。
先代キャッシュカイと並んで欧州SUV市場の火付け役となったジュークですが、日本市場にはあまり意図が伝わらなかった感があります。ホンダCR-Z(これも偉大なトーションビーマー)に話題をさらわれた!?デザインがアブノーマル。そしてよくある話ですが、時代を先取りし過ぎた感も。日産には次世代モデルでさらなる世界観を押し広げてほしいです。
第1位 アウディQ2(299万円〜)
最後はちょっとおふざけですが、プレミアムブランドなのに、トーションビームがあるアウディ。動画の中で河口さんも半笑いですが、トーションビームで1.4Lターボなのに405万円!!この世紀のスーパーボッタクリ車が日本で大ヒットしたら面白かったのに。・・・ってまあ売れるわけがない。買う人はゼロではないだろうけど、ほぼ全員アウディのディーラーマンに一発食わされてます。ちなみに同じプラットフォーム『MQB-ミニ』を使ったポロが日本でも発売になりました。1.0L直3ターボで209万円。同じエンジンを使ったQ2が299万円。走行性能は日本の軽自動車並みですけども、ライバルはスマート!?ってことで『リッチなトーションビーマー』を突き進んでいます。