新型クラウンに威厳はあるか!?
480万円〜という狂気の価格設定で、トヨタのみならず「日本のフラッグシップ」ともいうべき新型クラウンが発売されました。年収の3分の1ルールを適用すれば、大企業のエクゼクティブしか手が届かない価格になりましたけども、トヨタは「若返り」を目指していると高らかに主張しておりますが・・・。トヨタの目論見がうまく行くといいですね。けども「日本のフラッグシップ」ですから、「その他大勢」のクルマたちにはない魅力ってのが欲しい。フェラーリ488のとなりに停まっていても違和感がない、あるいは逆に注目を集めるくらいの風格があってもいい。488も隙だらけのデザインの『ターボエンジニアリング・スーパースポーツ』に過ぎないわけですから・・・。
自動運転が始まれば、単なる動く個室&マッサージチェア!?
いうまでもなくフラッグシップモデルを選ぶ意味は、そのメーカーが表現しうる全ての情熱がそこにそそぎ込まれているからなわけですが、近頃ではこれが全ての情熱なのか!?と首を傾げたくなるモデルもちらほら見られる。欧州系メーカーになるとクルマ自体が、サプライヤー主導の設計になっているようで、液晶パネルありきのインテリアだったり、どっかの市場ばかりを意識したバランスの悪いロングボデーを晒していたりと、経営上のご都合主義でできた一番大きなサイズの「ラインナップ」ってだけのモデルが多くないですか!?レクサスLSやトヨタクラウンがこれに当てはまるかどうかはまだわかり兼ねますけども・・・。
マッサージ&液晶パネルの前に・・・優秀なマシンであるべき!!
これからもフラッグシップセダンは作られ続けるのだろうか!?それとも全てSUVに食い尽くされて、メルセデスとレクサスだけが細々とサルーンを作るようになってしまうのか!?現状で見られるフラッグシップセダンの「明るいニュース」になりうるモデルを選んで見ました。判定基準はただ一つ・・・メーカー開発者の注ぎ込んだ「熱量」だけ。
第5位 マツダ・アテンザ
持続可能なフラッグシップ
3世代目のアテンザは、世界を熱狂させた初代/二代目とは違い、設計自体はトヨタ、ホンダ、日産が北米で巨大なマーケットを得ているFFセダンに準じるものに過ぎない。同設計を使いつつも北米で成功したレクサスESを抜け目なくリサーチした『マツダ版レクサスES』というのがこのクルマの現段階の妥当な評価。さすがに横置きV6ユニットの導入は断念したけども、世界最先端の静粛性を極めたディーゼルユニットの投入で異彩を放っている。フォードから放逐され、リーマンショック&円高のダメージをまともに喰らいつつも、『4輪組み立て事業』から撤退することなく(MAZDAなら優秀なサプライヤーになれそうだが)、限られたマテリアルで「価値あるクルマ」を作っている。
日本にマツダがある幸せ
日本向け仕様においても、カムリHV、アコードHV、ティアナよりも、内外装のデザインやパワフルなディーゼルユニット、そして乗り味の良さで負けないマツダ得意の「トルコンAT」と「サスペンション」で北米ベストセラーモデルと堂々と渡りあっている。初代/二代目とはや違う視点ながらも、「マツダを選ばせる」モデルとしてのアテンザの伝統はしっかり守られている。内装デザインの緻密さは、本気でレクサスLSやレジェンドに勝負を挑みそうな雰囲気すらある。そしてレクサスのサルーンと同等以上に静かな車内。レクサス/トヨタ車よりも気密性が高い。オプションのオーディオもよくできている。フロントシートはマイナーチェンジによってレクサスの特別オプションであるシートコンディショナーが付いた(Lパケ標準)。さらにLパケならリアシートにシートヒーターもシェードも付くし、足りないものはマッサージ機能くらいじゃないだろうか!?日本の電機メーカーのレベルの高さを日本製セダンで味わう・・・これが現行アテンザの醍醐味!? 忘れてほしくないけどもマツダは世界最高の自動車メーカー。
第4位 ボルボS90
日本&ドイツを見下ろす
アテンザよりも200万円くらい高い。直4横置きFFサルーンにしては、レクサスESを超えた価格設定となっている。アテンザやESとの違いは、エアサスを組み込むために、安定した走行性能を得るためにサスペンションにコストをかけていること。セダンとワゴンではリアサスのバネ形状が違うし、タイヤのグリップを補うアライメントの自由さを確保するためにフロントDWBを配した設計が光る。本来このようなハイスペックな足回りはトヨタ、ホンダ、マツダなどの日本勢が得意とするところだけども、中国スウェーデン合作のシャシーは、いよいよ日本メーカーを上から見下ろすようになった・・・。
清々しい風のようなサルーン
このハイスペックなシャシーを使ったボルボの上位モデルが人気だ。フォードから放逐された頃には、日本からの撤退も囁かれていたけども、販売台数は過去最高レベルの月1500台前後を記録、もしかしたら年内にもアウディを超えてしまう可能性が出てきた。日本メーカー車を見下ろし、ドイツサルーンの中でもハイスペックで鳴らすアウディを超えたとなれば、いよいよ『S90』はレクサス(トヨタ)、メルセデスと肩を並べる日本市場を代表するサルーンとして成功するかもしれない。セダン好きならば、ボルボファンでなくても気になって仕方のないスペック&価格・・・。
第3位 ホンダ・レジェンド
なぜスーパースポーツのサルーンを作るのか!?
ホンダが日本市場ではあまり見せていない顔がある。それは世界最良の万能サルーンを作ること。先代のレジェンドは発売時期が悪かったこともあり、あまりインパクトを残せなかったけども、ホンダが誇る高回転VテックのV6ユニットに、10年前の段階で2000kg級の巨大サルーンを軽々と回頭させるトルクベクタリング機能を誇るAWDシステムを備えていた。セダンのボデーを持つ「スーパースポーツ」。その技術的な価値はフェラーリ458やポルシェ911と同等であり、2007年に登場したエボ10やGT-Rとならぶ、日本が産んだAWDスポーツの傑作だった。ただし実用的なサルーンとしての燃費性能は平均以下だったけども・・・。
ホンダの裏の顔
タイミングが悪かったけども、ホンダはくじけずにハイブリッド版を開発した。NSXと同じシステムを前後反対にして使っているってところが、レジェンドオーナーの心に刺さったポイントなんだろうけども、このクルマは決してNSXの副産品ではない。ホンダ/アキュラがアメリカで展開しているサルーンの幅広いバリエーションの1形態が日本でも販売されているに過ぎない。NSXのように逆輸入が可能ならば、もっときめ細かいサルーン選びができる。北米向けアコード/ILX/RLXで使われている横置きミッションは豊富だ。10AT(アコード&RLXガソリン)、8DCT(ILXガソリン)、7DCT(RLXのHV)と6MTが用意されている。8DCTはツインクラッチにトルコンを合わせた世界初のオリジナルミッション。これを日本でも発売してほしーよな。
第2位 キャデラックCT6
悔い改めたキャデラックが放つ高級サルーン
キャデラックはCTSとATSの2台体制でグローバル展開を目論み、上海に生産拠点を構えたが世界の全てのプレミアムブランドの中でも破格の大失敗を喫した。「右ハンドルモデルを用意しない」「シャシーはコストダウン仕様」「BMWに見切られた『6L』ミッションを使用」など・・・ユーザーをやや舐めきった設計でしたから無理もない。ちなみにCTSとATSは、中国政府からは「高級車」と認められず輸入が拒否されやむなく現地生産になりましたが、その生産拠点を使ってこのCT6も製造されています。
まさかのレクサス・・・
同じFRサルーンながら、ATSやCTSとは全く別のプラットフォームを導入。今時フラッグシップ専用プラットフォームを使っているのは、レジェンドとCT6くらい!? ボルボと同じ考え方で、エアサスを組むためにフロントDWBとなり、5m超のボデーの小回りをよくするために4WSを採用。最近どっかで聞いたような設計だな・・・あの日本メーカー車はどうやらCT6を適度にパクったみたいです。GMが本気で作ったフラッグシップサルーンは素晴らしい。エンジンもV6自然吸気というナチュラルな形式。これで右ハンドルモデルがあればいいのだが・・・。
第1位 マセラティ・クワトロポルテ
王者
北米市場で10万ドル以上の価格を提示しているフルサイズサルーンといえば、メルセデスSクラスとマセラティ・クワトロポルテの2台。日本で買えばクワトロポルテ、Sクラス、7シリーズ、A8、LS、CT6のどれもが1000~1200万円くらいですけども、北米価格から勘案するにお買い得なのはSクラスとクワトロポルテ。V8自然吸気で優雅に走るグレードは消え失せて、アルミボデーの採用によりなんだかEクラスやCクラスの「相似形」とか言われるようになったSクラスの評判はあまり芳しくない。最近になって直6&48Vマイルドハイブリッドが話題だけども、なんだろな・・・なんか違うんだよな。直6ユニットはスポーツカー専用シャシーになったSLCか、Cクラスクーペにでも積んで欲しい。
正攻法
フェラーリのエンジンを積んだサルーン。最高のエンジン、最高のボデー、最高のデザイン、最高のフィール・・・。とりあえずクワトロポルテこそが、全てのフラッグシップサルーンの中でも、さらにその頂点に位置する存在だと思う。別にSクラスが悪いと言っているわけではない。クワトロポルテのこだわりがやや優っていて、アメリカ市場も日本市場もマセラティを支持しているし、その理由も十分にわかるってこと。まだまだ安泰なドイツの盟主に対して、イタリアの自動車文化を「高級乗用車」というジャンルでほぼ一手に支えているマセラティでは、1つのモデルに注ぎ込む熱量が違うのは自然なことだと思う。
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