アウディA7「クルマMODE」
デザインがあまりにも洗練され過ぎていて日本の町並みには合わない!?いやいや乗りこなせる風貌の人がほとんどいないと言った方が適切なのだろうか。アメリカの弁護士ドラマを見ていると、レクサスLS(先代)やこのアウディA7がショーファーサルーンとしてよく出てくる。使われ方にちょっと差があるのが面白い。
ショーファーサルーンの類型
業界の大御所みたいなキャラが後席から降りてくるのはベントレー・フライングスパー、メルセデスSクラス。中堅事務所のシニアパートナーが使っているのがレクサスLSやBMW7シリーズで、ちょっと派手なドレスを着た、ひとクセのありそう女性のシニアパートナーが乗っているのがアウディA7。ショーファーサルーンの中でしっかりとキャラクラーを確立しているようだ。
スーツ選びと同じ感覚
春先から夏に向かってスーツを入れ替えて、モヘア混のちょっと目を引く柄の2ピースを着ている時が1年で一番気分がいい!!というエクゼクティブには、このA7が合っているかもしれない。ネイビー単色のフレッシュマン風のスタイルなんて絶対に嫌だ!!という目立ちたがり屋が背伸びして乗るサルーンとしてもあり!?中古車なら300万円を切る価格帯からあるし・・・。
トヨタの熱視線
レクサスLSは現行モデルに変わり、従来の「ショーファーモデル入門編」みたいな立ち位置からアウディA7に寄せている。同じタイミングでセンチュリーもフルモデルチェンジされたのでグループ内で一括開発し、マーケティングを考えて作り分けたのだろう。2兆円を軽く稼ぎ出すトヨタが、最も真剣にアウディを冷静に研究している。
日本で爆発的に売れる可能性アリ
アウディの新しいブランド・モチーフになりそうな「e-tron」シリーズは、「フルサイズSUV」に続き「4ドアクーペ」が登場した。アウディらしい先進性を表現したタイトで隙の少ない洗練されたデザインは、いきなり日本でドッカンと火がつくなんてこともあるかもしれない。初代のメルセデスCLSや、初代クワトロポルテなど、新規の高級モデルは意外とあっさり日本で売れてきた(どちらも二代目は無風だったが)。
現実的な話
東京に住んでいる人がタクシーもハイヤーも必要な分だけ使い倒しても、実際のところはCクラスや3シリーズの車両価格&ランニングコスト(保険、駐車場、税金)を合計した金額にすら及ばないだろう(八王子から都内まで毎日出勤しない限りは・・・)。つまり所有したいと強く思わせるだけの魅力が備わっているかどうか!?現実問題として3シリーズ、Cクラス、アウディA4、アウディA3セダンにそこまでの価値はあまり見出せない。クルマが必要なご家庭では東京でクルマを所有するならコレかな!?と消極的な理由で選ばれてはいるだろうけども、タワマン駐車場に置いておくのは気が引ける。吉祥寺や国分寺エリアでもさすがにキツい・・・。
情熱市場
「日本車なんて興味ない」という意思表示は、日本メーカーのアイディアごときでは、自分のライフステージを大きく押し上げるのは無理だ!!ってことを意味している。このアウディ「e-tron」はそういうユーザーにとっては無視できない魅力を備えた「久々」の輸入車モデルかもしれない。Sクラス、CLS、7シリーズ、クワトロポルテ、カイエン、パナメーラ・・・どれも賞味期限はとっくに切れた。レクサスLCは60歳以上じゃないと刺さらない。日本メーカー車ではNSXやGT-Rの2台くらいか!? 候補車が不足する中で、この「e-tron」の2台は有力候補か!?新しいタワマンなら充電スペースも付いてくるだろうし。
ハイテク
ショーファーサルーンの中でも、バージョンアップにやたらと意欲的なのがアウディA8で、静粛性、運転支援、安全性、経済性など、全方位で最先端を走ろうとしている。ただし同じグループに同じシャシーを使うベントレーがあるので、それほど目立つことはないのだろうけど・・・。
見た目は・・・
このA8は最初から個人所有はあまり視野に入っていないようで、エクステリアにはあまり惹きつける要素は少ない。アウディTTを5.3mまで膨らませた、A4、A6の相似形でしかない、いかにも中国市場サイドの大味な印象から、このままでは日本でヒットする可能性はほぼゼロだ。
これは本物だ!!
見た目はとても地味な上に、A4やA6と同じ設計のシャシーと聞くだけで、魅力が乏しいように思うけど、ボデーの素材が全然違うので、乗ってみたらジワジワとクルマの価値に気がつくかもしれない。車格こそ全然違うけども日本メーカー車だと、スカイラインやアテンザみたいな乗って初めて気がつくコアな魅力がある。その隠れた魅力に気づくと、アウディA6やボルボS90とあまり変わらない無粋なデザインも「戦略」なんじゃないか?という気がする。
伝統
誰かを乗せた時に、「このクルマすごくいい!!」と感激される。これがサルーンの本来は最も大事にされるべきポイントなのだけどさ、日本に集結する1500万円くらいまでのサルーンでそれを追求できているモデルがどれだけあるのか!?スカイライン、フーガ、アテンザ、A8・・・あとは? このA8こそがドイツサルーンの実力を見せつけるモデルじゃないかと。かつてドイツには「メルセデス」を超える高級車ブランドとして「ホルヒ」が君臨していた(1920年代です)。その「ホルヒ」の流れを汲むブランドこそがアウディ。戦前からある日本の高級車お代名詞は日産。高度経済成長期に外国車のボデーを輸入してまで高級車にこだわり、バブル期には12気筒モデルを海外に輸出しようとしたのが東洋工業(マツダ)。やっぱりフラッグシップサルーンには、その歴史が宿っている・・・。