「CHINAターボ」がドイツプレミアムの価値を破壊した・・・




ダウンサイジングターボへの疑問

「自動車評論以前の問題」としか言いようがないけど、2010年代の前半にカーメディアが総力を挙げて絶賛したために、何の疑いもなく日本市場における輸入車トレンドとなった「小排気量ターボ」。その旗振り役だったフォルクスワーゲンが数年前から方針を転向してしまったことと共に、マツダの一部のエンジニアがこのトレンドに大きな疑問を投げかけたこともあって、今までの機運が一気に萎み何のありがたみもない存在に滑り落ちた。

マツダが強硬に反対した理由

日本市場ではVWが牽引したイメージが強いけど、多くのカーメディアに小排気量ターボのポテンシャルを信じたいと思わせたのは、これまでも度々ブレークスルーを起こしてきたフォードとホンダの強力な2社が1.0Lターボの開発を進めたからだと思われる。この2社が歩調を揃えればそりゃ「時代が動く」と思ってしまうのも無理はないかも。フォードグループの開発の主力を担っていたマツダは、この方針に従うことを良しとせずにグループからの離脱を決めたらしい。

カーメディアは10年前を振り返ってみては!?

2010年頃には、2019年の現在はほとんどの国産メーカーがコンパクトカーのみならずミドルサイズのSUV、セダン、ワゴン、ミニバンまで1.0Lターボ前後の排気量のエンジンが普及しているだろうと予測されていた(カーメディアの根拠のない憶測だが)。CO2削減への取り組みが進む欧州のブランドが先行し、(カーメディアが遅れていると断定する)日本メーカーが後から追いかける形で普及するという青写真が常識として語られていた。そして明らかにそれに影響されたと見られる人々が、私が書いた「自然吸気エンジンはやっぱり最高だ!!」みたいなブログ投稿に、「全く現実が見えていない盲目的」と書いてきたコメントがいくつもあったことを今でも覚えている・・・。

カーメディアの認識は刷新されない

グローバルでの拡販を目指すスズキやトヨタの国内モデルに小排気量ターボが導入されたけども、それでも予想された状況とはかけ離れている。2019年にフルモデルチェンジを遂げたばかりの新型Aクラスにはルノー日産から供給される1.3Lターボが供給されているけど、これはメルセデスにとっての「Kカー」みたいなものであり、決してエンスー向けモデルとして語るレベルにはない。ある程度の重量を引っ張るFF車用ユニットとしての実用性は否定しないけども、ルノー日産において「走りが好きな人々」に買ってもらいたいエンジンは別枠で用意されている。メルセデスの使い分けにおいてもすでに小排気量ターボへの評価は見えているのだけども、まだまだ日本メーカーの非ターボ化方針を揶揄する記事を書くカーメディアもあったりする。

日本のカーメディアがダメである証拠

「走りがどーのこーの」と書き立てることが好きなカーメディアであるならば、最初からダウンサイジング型ユニットのポテンシャルを冷静に見極めるべきだった。幸運にもそれがほぼほぼ出来ていたアメリカ、欧州、中国の(日本に比べれば相当に)健全なカーメディアは、当初から問題点を指摘していたことで市場は極めて健全な姿勢で1.0Lくらいの小排気量ターボを搭載する自動車の意義を受け止めることができた。それらのエンジンが抱えていた初期的な瑕疵を遅滞なく判断し、当局がフォルクスワーゲンなどに是正命令を出したり、市場が拒否反応を示したために販売が取りやめになったりした。その一方でなぜ日本市場のVWゴルフではいつまでも1.2Lターボの販売が継続し、今になってやっとディーゼルモデルが導入されたのか!?

福野礼一郎の責任は!?

K沢やS水K夫などのダブルスタンダードでレビュー内容がしばしば支離滅裂な連中が、タイムリーにVWゴルフを賞賛していたとしても、何も頭に残ることなく忘れ去られるものだけども、2013年のゴルフ7は福野礼一郎が首魁となってセンセーショナルな存在だと絶賛されていた。なぜ良識派の超大物がここまで「どーでもいい出来」のクルマを絶賛するに至ったのか!?おそらくだけども、トヨタのHV攻勢の前にただ立ち尽くして白旗を挙げるしかなかった輸入ブランドに置いて、VWのダウンサイジングターボ路線は唯一といっていいくらいのポジティブな動きだったからではないだろうか。

トヨタの大成功が状況をクレイジーにした・・・

アルファロメオ、ボルボ、シトロエン、ルノー、プジョー、フィアットなどの欧州の大衆ブランドは、2010年頃の日本市場においてはいつ撤退を決断してもおかしくない状況だった。これらのブランドがトヨタ・アクアのようなハイブリッドユニットの性能をすぐに獲得することは困難であったし、デザインでさえもアクアに遅れをとっていた。日本のカーメディアがVWゴルフに肩入れしたのも理解できる。その後BMW、マツダ、メルセデスがディーゼル戦略で一定の成果を得たこともあって、VWのダウンサイジングターボはハシゴを外された格好になったが・・・。




若い世代は冷静だ・・・

3LのV6ツインターボ405psのスカイラインが若い世代にも人気らしい。以前より割安な価格で提供されてきたメルセデス製の直4ターボ搭載モデルには見向きもしなかった若い世代が殺到したことに日産陣営も驚いた・・・と書かれているけど、インフィニティの海外展開を見る限りは日本でV6ターボのスカイラインが人気になることは確信していたと思われる。日産がエンジンを外注してまで直4ターボをスカイラインに導入したのは、主に中国市場への対応のためだったのだけど、ベースモデルとして発売した北米、日本、欧州ではさっぱり反応がなかった。

スカイアクティブXを批判する前に・・・

そりゃそーだ。ホンダ、スバル、三菱などのスポーティなVテックやターボエンジンの味を知っている市場に売るには、ドイツのプレミアムブランドが長らくベースモデルに使っている直4ターボエンジンはあまりにも市場をナメている。日本のカーメディアは未発売のマツダの新型エンジンに対して杞憂のような不満を述べているけども、10年ほど販売され続けてきたものの、若い世代に完全に無視され続けてきたドイツの直4ターボの不作為を真っ先に批判すべきだと思うのだが・・・。

わかり合うことは無理なようだ・・・

中国市場向けに排気量を2Lに揃え180〜220ps前後で、出力ピークを5000rpm程度に抑えたガソリンユニットを搭載したモデルの価値は10年にわたって底を破り続けた。BMW3シリーズは2世代前のE90の頃から、残クレで返却された中古モデルが強烈な値崩れを起こし、販売店に努めるスタッフも直6モデルしか欲しがらないという状況にあったのだが、そのことをブログで軽くイジったらE90に乗っててクルマのブログを書いていると思われるオッサンから根拠もなくブログ内容を否定するコメントをもらったこともあった。

「スカイライン・ショック」は状況を変えるか!?

メルセデスは日本市場の実情に合わせた電動ターボ機構を仕込んだ新型エンジンを拡販しているけども、いまだに2Lターボを日本市場にゴリ押しし続けるBMW、アウディはこのまま同じ状況が続くなら日本、欧州、米国ではさらに販売を減らすだろう。この10年ですっかりメッキが剥がれた「プレミアム」・・・なのだけども、作るメーカー、売るインポーター、オススメするカーメディア、喜んで買うオッサンの4者が発するプロパガンダは地盤沈下が進みつつも一体感を保っていた。しかし今回のスカイラインの改変によって、若い世代のユーザーは冷静に見抜いていることが明らかになった。それと同時にMAZDA6にマヌケなターボを搭載したマツダも完全に赤っ恥だ。




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